ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』は実話なのか?結論から言うと、本作は特定の史実を基にした物語ではありません。
しかし、グリム童話の原作にはディズニー版とは正反対の、残酷で「怖~い」真実が隠されています。
本記事では、物語のモデルとなった中世の伝承や、原作初版のあらすじを徹底解説。ディズニープリンセスの裏側に潜む“もう一つの物語”を明らかにします。
原作『ラプンツェル(初版)』基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 作品名 | 『ラプンツェル』 |
| 出版年 | 1812年(『子どもと家庭のためのメルヒェン集』) |
| 言語 | ドイツ語 |
| 作者 | グリム兄弟(ヤーコプ・グリムとヴィルヘルム・グリム) |
ラプンツェルの物語は実話?【結論と検証】
『ラプンツェル』は特定の事件をモデルにした実話ではありません。
しかし、作中に登場する「怖~い描写」の裏には、当時の実情や伝承が強く影響しています。
本章では、「実話」という観点から、物語のモチーフとなった部分を検証します。
1. 【実話検証】ラプンツェルの「怖い描写」に隠された当時の実情
グリム童話『ラプンツェル(初版)』には、当時の社会の実情や風習を反映しているとされています。
現代の視点から見て違和感や怖いと感じる描写があります。
怖い描写のポイントを解説
- 親が自分たちの身を優先し、子ども(ラプンツェル)を差し出す
- 実話性: この描写は、我が子より自分の欲望や命を優先する人間の弱さを描いていますが、当時の貧困や飢餓による口減らしや人身売買といった社会問題が背景に見え隠れしています。
- 性の知識がない(妊娠も分からない)少女と若い王が夜の営みに励んでいた
- 実話性: ラプンツェルが意図せず妊娠し、その結果追放されるという流れは、中世の女性が置かれた低い地位と性教育の欠如という当時の実情を反映しています。
この「妊娠」の描写こそが、初版の最も衝撃的な要素であり、後の版で改変された理由と考えられています。
- 実話性: ラプンツェルが意図せず妊娠し、その結果追放されるという流れは、中世の女性が置かれた低い地位と性教育の欠如という当時の実情を反映しています。
- 茨に突き刺さって、王が盲目になる描写
- 実話性: この残酷な描写自体は童話の要素ですが、物語に重みを持たせるための当時の懲罰的な思想の影響が指摘されます。
2. 【元ネタ検証】『ラプンツェル』のルーツと伝承は実話?
グリム童話『ラプンツェル』は、グリム兄弟が創作したものではなく、伝承されてきた昔話が元になっています。
元ネタは昔話『ペトロシネッラ』

『ラプンツェル』の元ネタは『ペトロシネッラ(Petrosinella)』というイタリアの昔話でした。
2作品の主な違いとしては、以下のようなものがあります。
- 盗む植物は、「ラプンツェル」ではなく「パセリ」。
- おばあさんは「妖精」ではなく「鬼女」。
- ペトロシネッラは、7歳になると学校へ通う。
- (重大な違い) 王子との密会がバレる手段が違う(召し使いの密告)。荒野追放や王が身を投げ盲目になる描写がない。
- 王子とペトロシネッラは、鬼女を撃退する(3つのどんぐりを使って犬・虎・狼を出す)。
これらの描写は子どもに配慮してか、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』では、カットされていることが分かります。
ペトロシネッラの怖い描写
- ペトロシネッラ(ラプンツェル)が連れ去られる展開。
- 鬼女が学校に通う少女に伝言を託し、母親に圧をかける展開。
- とうとう母親が娘に「勝手にもっていきな」と鬼女への伝言を託す展開。
- ペトロシネッラが伝言を伝えると、鬼女に髪の毛を引っ張られて連れていかれる描写。
グリム童話『ラプンツェル(初版)』怖いあらすじ
読者が気になっている「グリム童話の初版」に描かれたあらすじを詳しくご紹介します。
原作『ラプンツェル(初版)』簡単なあらすじ
とある夫婦が、妖精の庭からラプンツェルを盗みます。その罰として妻の子が生まれたら妖精に与える約束をさせられます。
妖精に与えられた赤子は「ラプンツェル」と名付けられ、高い塔に閉じ込められ育ちます。
ある日、若い王がやってきて美しいラプンツェルを見つけます。彼は妖精と同じ方法で、彼女の長い髪を梯子がわりに使い会いにいきます。
やがてふたりは愛し合うようになります。
しかし妖精に妊娠がバレてしまい、ラプンツェルは荒野に追放されます。
その事実を聞かされた王は、ショックのあまり塔から身を投げ、盲目になりました。
時を経て、ふたりは荒野で再会。ラプンツェルの涙で王の視力は回復。みんなで王国に戻り幸せに暮らしました。

原作『ラプンツェル(初版)』詳細なあらすじ
ある夫婦が子供を望んでいました。
とうとう身籠った妻は、隣の庭で妖精が育てている「ラプンツェル」という美味しそうな植物を食べたいあまりにやせ細ってしまいます。
※「妖精(Fee)」…第2版では「魔法使いの女(Zauberin)」に改変される。
妻に訳を聞いた夫が(“食べなければ死んでしまうわ”)、夜中に庭へ忍び込んでラプンツェルを摘み取ります。
妻はさらに欲しがりました。そのため、夫は再び庭へ忍び込みます。
しかし妖精に見つかってしまいます。夫は、見逃してもらうかわりに妻の子供を与えるという約束を受け入れてしまいました。
その後、妻は出産しますが、妖精は約束通り奪い去ってしまいます。
ラプンツェルと名付けられた少女は、美しく育ちました。12歳になったとき、妖精は彼女を高い塔に閉じ込めて育てました。
ある日、若い王が塔の近くを通りかかり、ラプンツェルの美しい姿と歌声に惹かれます。
※「若い王」…第3版では「王子」に改変される。
妖精がラプンツェルの髪を梯子がわりに使うのと同じ方法で、塔に上ります。

二人はふたりは逢瀬を重ね、愛し合うようになります。
妖精はその関係に気づくと(“名づけ親のおばあさん、わたしの洋服がきつくなったのはどうして”)、ラプンツェルの髪を切り落とし、荒野に追放していしまいます。ラプンツェルは男女の双子を生みました。
※(“名づけ親のおばあさん、わたしの洋服がきつくなったのはどうして”)
…第2版では(“おばあさんを引っ張り上げる方が、若い王と比べて重いのはどうして”)
王がラプンツェルに会いにきたとき、妖精に事実を告げられました。王はショックのあまり、塔から身を投げました。茨が突き刺さり、盲目になってしまいます。
王は泣く泣く、木の実などを食べて森で過ごしました。
時は過ぎ、王はラプンツェルのいる荒野にたどり着きます。二人は再会し、ラプンツェルの涙によって、王は視力を取り戻します。
みんなで王国へ戻り、幸せに暮らすことになりました。
参考:翻訳 グリム兄弟の『子どもと家庭のためのメルヒェン集』の編纂ストラテジー
映画『塔の上のラプンツェル』と原作との違い(※初版比較)
最後に、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』と原作(初版)の違いを改めてまとめてご紹介します。
| 項目 | 原作(初版) | 映画(ディズニー) |
|---|---|---|
| おばあさんの属性 | 妖精 | 魔女 |
| ラプンツェルとおばあさんの関係 | 名付け親だと理解している | 母親だと誤解している |
| ラプンツェルを奪う理由 | ラプンツェル(植物)をあげる代償として | 髪の毛に宿った若返りの力を手に入れるため |
| 王家の子なのは? | ヒーロー | ラプンツェル |
| ヒーローの属性 | 「若い王様」 | 「お尋ね物の大泥棒(オリジナルキャラクター)」 |
| 高い塔から出る理由 | おばあさんに密会がバレたから | 外の世界に憧れを抱いていたから |
以上の結果となりました。高い塔を出てからは、映画ではオリジナルの展開が続きます。
この物語『ラプンツェル』は、世代を超えて、多くの人々に愛されています。
まとめ:『ラプンツェル』は実話ではないが、当時の社会が反映された物語
本記事では、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の原作について、特に「実話性」の観点から徹底的に調査しました。
結論として、物語自体はフィクションですが、当時の社会背景や風習が色濃く反映された要素を含んでいることが分かりました。
- 実話性:特定の事件ではないが、当時の貧困や社会問題を背景に持つ可能性。
- 原作の怖さ:我が子より自分の身を優先する親、性知識のない少女との夜の営み、若い王が盲目になる描写など、社会的タブーが描かれている。
- 原作の元ネタ:物語のルーツは、イタリアの昔話『ペトロシネッラ』にある。
- 原作と映画の変更点:「怖い初版」の要素がカットされ、代わりにヴィランの属性、奪う理由、ヒーローのキャラクターなどが現代向けに大幅に変更されている。
あなたの抱いていた疑問が解消されたなら幸いです。最後までご覧いただきありがとうございました。