小説『出版禁止(長江俊和著)』についてです。
2014年に発売以来、『掲載禁止』『放送禁止』など大人気「禁止シリーズ」第一作です。
「心中」をテーマに繰り広げられるモキュメンタリーです。
読了後、気になる点が残った方も多いのではないでしょうか。
ということで本記事では、
- 誤字(変換ミス)はどの部分か?
- 「生還することなど、もはや不可能」の意味は?
- カミュの刺客の真相は?
について考察・解説しています。
最後に感想も載せています。ぜひご覧くださいませ。
本記事はネタバレが含まれます。
【出版禁止】主な登場人物
■長江……作家。ひょんなことから出版禁止となった原稿を出版にこぎつける。
■若橋……ルポライター。熊切に影響を受けた。七年前の心中事件を追っている。
■七緒……熊切の元秘書。心中事件の生き残り。
■熊切……心中事件で亡くなった。ドキュメンタリー作家。尖った作品を世に送っており、敵が多い。
■神湯……大物政治家。影で熊切を支援していた。熊切と親子だという噂がある。
■高橋……神湯を信奉するシンパの政治結社の代表。
【出版禁止】「誤字(変換ミス)」とは?ネタバレ考察
誤字(変換ミス)は、「視覚の死角」です。
ここまで書いたらお気づきになるでしょうか?
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「刺客の刺客(しかくのしかく)」です。
つまり、「刺客(七緒)の刺客(若橋)」です。
神湯サイドのいう、若橋に与えられた使命とは「刺客の刺客」だったのです。
【出版禁止】「生還することなど、もはや不可能」の意味をネタバレ考察
「生還することなど、もはや不可能」の意味は、「刺客として対象を殺し、生還する」までが若橋の使命だったということです。
この件については、あとがきで作者の長江さんが考察していましたね。
「なぜ七緒の遺体をあんな風にしたのか」についても、すべてはこのためなのです。
【出版禁止】「カミュの刺客」の真相は?恐ろしい……
若橋こそが「カミュの刺客」だったということです。
“「カミュの刺客」は、自分が誰に雇われたのか、なぜ殺害するのか知らされないこともある”――そんな情報を握っていた若橋自身が、まさかのその対象にされていたのです。
冒頭に、このような記述があります。
私は知人からこんな依頼を受けた。
「熊切敏の死を知りたがっている人物がいる。どうだ、君が真実を解明してみては?」
知人によると、依頼者の素性は明かせないが、その人物は、ある程度の取材費なら都合してもいいということだった。
小説『出版禁止』
つまり、若橋に依頼した人物こそ神湯・またはシンパだったのです。
普段はマスコミの取材に応じない高橋が、あっさり若橋を招き入れました。恐らくここまで筋書き通りだったのでしょう。
この日から、シンパたちは、何度か若橋に接触し暗示をかけるのです。
七緒の殺され方についても、恐らくシンパたちの指示通りだったのかなという気がします。強い私怨を感じますね。
【出版禁止】ネタバレ感想「ふたりが結ばれる未来もあったのかな……」
若橋のルポルタージュには「児戯」が施されています。
なのでどこまでが真実なのか分かりづらい部分がありますね。
そのなかで言えることは、七緒が残した手紙は本物だということです。何故なら、この部分については作者の長江さんがあとから追記したものだからです。
七緒は確かに若橋を愛していました。
しかし若橋はどうだったでしょうか。ルポライターとして後世に名を残すことをひとつの目的としていたようにも思います。
それともこれも「児戯」のうちなのでしょうか。彼が後追い自殺をしたのは事実なのです。
取材を経て、さまざまな真相にたどり着いた若橋。終盤で七緒の遺体にインタビュー形式で答え合わせするかのようにスラスラと答えます。
しかし、そのなかでひとつだけ答えられなかった質問があります――それは「あなたは、私を愛していましたか?」というものです。
凄く切ないです。
やはり相手の心は見えないのでした。
【出版禁止】誤字/生還することなど、もはや不可能/カミュの刺客について考察まとめ
今回は小説『出版禁止(長江俊和著)』についてまとめてみました。
考察したところ、
- 誤字(変換ミス)……しかくのしかく(視覚の死角/刺客の刺客)
- 「生還することなど、もはや不可能」の意味……「刺客として対象を殺し、生還する」までが使命だった。
- 「カミュの刺客」の真相……若橋こそが「カミュの刺客」だった。
という結果となりました。
因みに筆者は、「心中」が日本特有のものだと本書で初めて知りました。
美しい響きもありますが、その先にあるのは現実として苦しみなのでしょうね。
ご参考になりましたら幸いです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。