小説『神様ゲーム』についてです。
著者は『貴族探偵』『鴉』などで知られる麻耶雄嵩(まやゆたか)さんです。
本書は、一見児童向けですが、よくよく読むと大人向けだということが分かります。ユニークな作品です。
本記事では、
「表紙の意味は?」
「犯人(共犯者)は母親?」
「ミチルが殺意を抱いた理由は?」
などについて考察していきたいと思います。
読了後に“モヤモヤ”が残っているという方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
あらすじ・ストーリー
神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか謎の転校生・鈴木太郎が事件の犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。そして、鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか?
小説『神様ゲーム』│講談社
主な登場人物
■芳雄
主人公。山添ミチルに密かに恋心を抱いている。浜田探偵団のメンバー。
■鈴木太郎
謎の転校生。特徴のない顔立ちで無口。ある日、“僕は神様だ”と主人公に打ち明ける。
■山添ミチル
東京から越してきた少女。色白で可愛い。母子家庭。マンションの裏で可愛がっていた野良猫を殺されてしまった。浜田探偵団のメンバー。
■岩淵英樹
主人公にとって無二の親友。親が歯医者で、いやいや塾に通っている。「浜田探偵団」に入りたがっている。
■坂本考志
浜田探偵団のリーダーで、探偵団をこよなく愛している。立派な体躯をしている。辻聡美のことが気になっている。
■辻聡美
浜田探偵団のメンバー。美人系でボーイッシュ。山添ミチルと正反対の性格だけど仲良し。
■俊也
浜田探偵団のメンバー。小柄で弱虫。
■父さん
主人公の父親。刑事。
■母さん
主人公の母親。身体が小さい。
表紙の意味は?考察
表紙に映っているのは「ハイジ」です。
「ハイジ」とは、ミチルちゃんが可愛がっていた野良猫です。
ハイジは身体は真っ白で足の先だけ黒井猫で、首輪をしていたからどこかから逃げ出したんだろうけど、ただの野良猫にはない気品みたいなようなものが、翡翠のような瞳やピンと伸びた髭、スマートな体つきからにじみ出ていた。
小説『神様ゲーム』│麻耶雄嵩
上記の引用文章の特徴を捉えていることから、ハイジだということが分かります。
ハイジは、本作における神様ゲームの象徴といえます。
ハイジの死を切欠に、主人公の世界は目まぐるしく変わるのです。
調べてみたところ、『神様ゲーム』の初版発行は2005年で、現在に至るまで表紙デザインが幾つかあります。
よって、表紙に内容とリンクする謎が隠されていたり、特段深い意味があったりするわけではないように思えます。
これらのことから、「神様ゲームを象徴したお洒落なデザイン」だと思って良さそうです。
ネット上には「思わず表紙買いした」という声もありました!
母親が犯人(共犯者)?考察
鈴木君の口から「犯人(共犯者)」の名前は明言されていません。
真実としては「犯人(共犯者)に天誅が下った」ということです。
何故なら、神様(鈴木君)は正しいからです。
そのため、「天誅」の内容によって犯人(共犯者)が変わります。
犯人(共犯者)については、大きく2つの捉え方があります。
- 母親が犯人(共犯者)
- 父親が犯人(共犯者)
それぞれに「犯人」と思わしき伏線が残されています。
以下、解説です。
1:母親が犯人(共犯者)だった場合
母親が犯人(共犯者)の場合は、どんでん返しというパンチが効いています。
- 犯人(共犯者)への天誅…“死”。
- 隠れ場所…井戸の蓋
- ミチルちゃんとの出会い…婦人会、又は授業参観など
- 神様(鈴木君)が「いいの?」と念を押した理由…片親が亡くなるから
- 伏線…身体が小さい・「私たち運が良かったのね」というミチルの発言、ミチル死亡後に赤い目をしている母親・主人公が本当の子じゃない(同性愛者) など
- ミスリード…父親が犯人だという主人公の推理
2:父親が犯人(共犯者)だった場合
よくよく考えたら…とゾッとするのは父親が犯人(共犯者)の場合です。
- 犯人(共犯者)への天誅…“愛する人の死”
- 隠れ場所…物置
- ミチルちゃんとの出会い…ハイジが殺された事件
- 神様(鈴木君)が「いいの?」と念を押した理由…犯罪者でもない人(母親)が殺されてしまうから
- 伏線…ミチルちゃんが父親に電話をかけるように促す・主人公に生存確認をさせる、など
- ミスリード…ミチルちゃんの死が天誅だった
「犯人(共犯者)はどっちなの?!」と児童書のごとく楽しめる構図が緻密に練られているのではないでしょうか。
個人的には、母親が犯人(共犯者)のケースのほうが好みです。
主人公が勘違いしたまま終わるより、そちらの方が成長しているように思うからです。
「ミチルが殺意をもって殺した」という違和感
ミチルちゃんが殺意をもって岩淵くんを殺したのは真実だと神様の口から語られていますね。
しかし、現場を見られたからといって、友人の首を絞めるほどの殺意を抱くでしょうか?
どちらかといえば、犯罪という意味でも、ミチルちゃんよりも先に大人が動きそうなものですが……。
本来、ミチルちゃんは野良猫を可愛がれる心が優しい子です。
ということで、ミチルちゃんの「殺意」について納得するために、語られなかったエピソードについて考察してみました。
ミチルが好きだったのは誰か?考察
ミチルちゃんには好きな人がいました。
ただ一ヶ月前に六年生に告白されて、「他に好きな人がいるから」と断ったという噂を聞き、実際少し前にぼくん家のことを何度か訊かれたので、もしかしたらって、わずかな希望はもっているけど。
小説『神様ゲーム』│麻耶雄嵩
神様は、ミチルちゃんと共犯者が「エッチなことをしていた」と言いましたが「愛し合っていた」とは言っていませんでした。
ミチルちゃんの好きな人とは誰だったのでしょうか。
1:好きな人は主人公
ミチルの好きな人は「主人公」だったのかもしれません。
通常、現場を観られただけで殺すとまではいかないように思います。
しかし、仮にミチルちゃんが主人公のことを好きだったとしたらどうでしょうか?
通常、突発的な殺意=「自己防衛(この場合、口封じ)」又は「苛立ち」の意味合いが強いですよね。
岩淵君と主人公は無二の親友です。
すぐに伝わってしまうと考えるでしょう。
さらに、沢田先生のように脅されていたケースも考えられます。
好きな人に知られないように必死だったのかもしれません。
2:好きな人は犯人(共犯者)
ストレートに捉えれば、ミチルちゃんの好きな人は「犯人(共犯者)」となります。
ミチルちゃんには父親がいません。母親は放任主義です。
気にかけてくれる人はいません。
ハイジはミチルちゃんの心の拠り所だったように思います。
ハイジ殺害後の、ミチルちゃんのダメージは計り知れません。
そんなときに寄り添って聞いてくれた犯人(共犯者)は、親代わりだったのかもしれません。
つまり、精神的に依存していたということです。
また一人ぼっちになりたくないという寂しさがあったのかもしれません。
いずれにせよ切ないです。
やはり、神様は少しイジワルですね。
考察『神様ゲーム』表紙の意味/犯人/殺意/考察まとめ
今回は小説『神様ゲーム』について、ネタバレ有りで考察してみました。
- 表紙の意味は?…表紙の猫は、ミチルちゃんが可愛がっていた野良猫「ハイジ」。本作の神様ゲームの象徴。
- 犯人(共犯者)は母親?…母親と父親、どちらの見方もある。
- ミチルが殺意を抱いた理由は?…“主人公のことが好きで、言いふらされるのが怖かった”もしくは“犯人(共犯者)と引き離されて、1人になるのが怖かった”
という結果となりました。
あくまで個人的な考察となります。
ご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。