小説『俺ではない炎上』についてです。
著者は『フラッガーの方程式』『六人の嘘つきな大学生』などで知られる浅倉秋成(あさくらあきなり)さんです。
本作『俺ではない炎上』は、現代に起こりえる事件にフォーカスされており、手に汗を握る作品です。
読了後には、サスペンス書籍ならではの疑問も幾つか残ります。
ということで本記事では、
- 時系列
- 犯人の動機
- 最後の言葉
- 映画化
以上4点についてまとめていきます。
本書について気になることがある方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
以下、ネタバレが含まれます。
【俺ではない炎上】あらすじ・ストーリー
ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。会社も、友人も、家族でさえも。ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。
双葉社公式サイト│Futabasha Publishers
【俺ではない炎上】主な登場人物
■山縣泰介(やまがたたいすけ)…ハウスメーカー「大帝ハウス」の営業部長。自己評価が高い。身に覚えのない「殺人の罪」で炎上してしまう。
■山縣茉由子(やまがたまゆこ)
…泰介の妻。控えめな性格。
■山縣夏実(やまがたなつみ)
…泰介の娘。大学生。
■江波戸琢哉(えばとたくや)
…相性は「えばたん」。夏実の小学校の頃のクラスメイト。正義感が強い。
■住吉初翔馬(すみよししょうま)
…大学生。例のツイートをリツイートしてバズらせる。
■堀健比古(ほりたけひこ)
…大善署刑事課。
■六浦(むつうら)
…県警捜査一課。洞察力が鋭い。
【俺ではない炎上】時系列は?
まずは、時系列についてまとめていきたいと思います。
- 過去(夏実が小学生)
- 現在(夏実が大学生)
時系列1:過去(夏実が小学生)
場所 | 出来事 |
---|---|
夏実がマッチングアプリでロリコンとやり取りする。 | |
公園 | えばたんの祖父が人影を見る。 |
倉庫 | 泰介が夏実を閉じ込める。 |
小学校 | 泰介が抗議するために乗り込む。 |
夏実が泰介名義でTwitterを始める。 | |
えばたんが夏実を誘って犯人(ロリコン)探しの旅に出る。 | |
展望ラウンジ | 夏実とえばたんが、大学生から正義のバッチを受け取る。 |
丘からの帰り道 | 夏実とえばたんが、泰介に叱られる。 |
時系列2:現在(夏実が大学生)
場所 | 出来事 |
---|---|
えばたんが夏実のアカウントを乗っ取る。 | |
公園など | えばたんが女性殺害。 |
家 | 初翔馬が「血の地獄海…」をリツイートする。 |
浜辺のコンテナ | 株式会社シーケンのショールーム打ち合わせ。 |
公園、倉庫 | 女性の死体発見(1人目、2人目)。 |
茉由子の実家 | 刑事たちが、茉由子に聞き取り。 |
スナック | 泰介が匿われる。 |
サクラ(夏美)と初翔馬が泰介の捜索開始。 | |
浜辺のコンテナ | 青木が泰介に車を貸す。 |
丘 | 泰介・夏実・えばたん・初翔馬が集まる。 |
夏実が小学生時代の出来事と、大学生になってからの出来事が交互に差し込まれているため「あれ?!」となります。
【俺ではない炎上】犯人(えばたん)の動機は?
「自分の正統性の証明のため」と思います。
- 燻っていたえばたん
- 「自分は悪くない」は、本書の1つのテーマ
1:燻っていたえばたん
えばたんは、アニメ主人公「セザキハルヤ」の決まり文句「俺は俺の信念を貫く」を胸に生きてきたことが分かります。
その理由は、大人になっても、アニメ『翡翠の雷霆』のピンバッジ(正義の証)を身につけていたからです。
えばたんは、バッジを貰った男性と夏実から認められて再骨頂でした。
恐らく、これが、えばたんにとっての“人生のピーク”といえます。
何故なら、その後、悪(父)の前でなにも言えずに泣いてしまうという醜態を晒します。
(おそらく夏実のことが好きだった少年心にひどく傷を負ったことでしょう。)
さらにえばたんの父親が他界し、高卒で働く(建築家の夢を諦める)という道を辿ります。
その頃から、自身の正統性を主張したい気持ちがあったのではないでしょうか。
そのためには、パパ活でお金を稼いで進学した女性たちを見過ごすわけにいきませんし、
立派なハウスメーカーに勤めている泰介のことも見過ごすわけにはいきませんでした。
セザキハルヤでいるために必要な行為だったのでしょう。
2:「自分は悪くない」は、本書の1つのテーマ
思えば、本書の登場人物はみな「自分は悪くない」「正統性」を証明することに必死でしたね。
Twitter民、山縣家、警察、サークル「PAS」の大学生たち……。
小学生の時点で、えばたんはその真意に気がつき、
「そういう大人になっちゃダメだ」
と語る賢い子でした。
“巨悪に正義を下さなくてはならない”
大人になったえばたんは、巨悪に制裁を下したつもりでいますが、
結局は”自分の価値感だけを信じる、そういう大人”になってしまっていたのでした。
彼らが一緒に家を建てていた未来もあったかと思うと、とても残念ですね。
【俺ではない炎上】泰介の最後の言葉は?
「俺が悪かった」
という気持ちを伝えたのだと思います。
途中、元の泰介に戻ってしまいそうでヒヤヒヤとしましたが、無事に“逃走中の痛み”を思い出すことができましたね。
泰介が、他責思考の人間から、自責思考の人間へ成長できたのだと思います。
おそらく、その後、家に帰って茉由子と夏実にも同じような言葉を伝えるのでしょう。
【俺ではない炎上】映画化は?
SNS上には、映画化を望む声が多くあがっています。
調べてみたところ、現時点で映画化の予定はありませんでした。
映画化が懸念される理由としては、本作は小説のほうが良さが出ることではないでしょうか。
例えば「虎柄の上着を着ると見せかけて、着ていなかった」「刑事が話しかける夏美を小学生と思わせる」などのテクニックは、文章だからこそ成立しています。
これが大ヒットとなれば、続いて過去の作品も…となるかもしれませんね。
もし映画化するなら、とても楽しみです!
【俺ではない炎上】『俺ではない炎上』の時系列は?犯人の動機は?映画化は?考察まとめ
今回は小説『俺ではない炎上(浅倉秋成著)』について考察してみました。
- 時系列…山縣夏実の小学生時代と大学生時代が入り混じっていた。
- 犯人(えばたん)の動機は?…「自分の正統性の証明」「自分の信念を貫く」ため。
- 最後に泰介が言った言葉は?…「俺が悪かった、みんなは悪くない」ということ。
- 映画化は?…今のところ映画化の予定なし。
- ハラハラできてとても面白かったです。
浅倉秋成さんの本を読んでいると気づきがあるし、とてもためになります。
乱れた相手を落ち着かせてあげるときに、「あなたはなにも悪くない」と声をかけてみてあげようかと思いました。
ご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。