「なぜ、あの結末になったのか?」
感動の名作と評される『心が叫びたがってるんだ。(ここさけ)』。
本作には、「気持ち悪い」「結末納得いかない」という声がSNSで絶えません。わたしもモヤモヤとしました。
ということで本記事では、実際に感違和感の正体をもとに、結末に込められた真意をスッキリ解き明かします。
※本記事はネタバレを含みます。
映画『心が叫びたがってるんだ。』あらすじ・ストーリー紹介
おしゃべりな少女・順は、ある日、坂の上の“お城(ラブホテル)”から父親が出てくるところを目撃する。それが原因で両親は離婚。両親から“おしゃべりな子だ”と責められ、幼心に傷を負う。
そんな順のもとに<謎の卵>が現れ、順の言葉を封印した。
学校恒例の「地域交流会」の実行委員は、順、拓実、菜月、大樹の四人となる。拓実は、心に言葉を閉じ込める風習のある神社の話を口ずさむ。心を覗かれたと勘違いした順は、彼に過去のトラウマを打ち明けるが――……。
順のキャラクター設定が気持ち悪い

個人的に「気持ち悪い」と感じたのは、“順みたいなキャラクターは現実には存在しないだろうな”、という点でした。
例えば、劇中で順はヒーローから「お前、表情はお喋りな(笑)」と言われます。
しかし、実際に失語症になるほどの心の病を抱え、クラスで孤立していたなら、もっと陰のある性格や雰囲気になると思うのです。
物語の冒頭から「ラブホで親の不倫発覚、離婚、失語症」という極めてシビアな作品の色でスタートするためそういう心がまえになるものの、主人公が「ラブコメディに登場しそうなアニメっぽいキャラ」として描かれているので違和感が生じます。(順というキャラクターは可愛くて好きです。)
彼女からは、数年間に渡り悩み苦しんできた垢が感じられません。
「結末」に納得いかない理由
「えっ、結末が納得いかない!」
そんな声が多いですね。
個人的にも、お約束の展開を期待していただめ、拓実と結ばれなかったのはやや肩透かしでした。
何故なら、劇中のヒーローは紛れもなく拓実だったからです。拓実と野球少年の尺の差は歴然でした。
納得いかない結末だけど「リアル」な理由

なぜ制作陣はあえてこの結末を選んだのか――?。ここからは、物議を醸したカップリングの意図を紐解き、この物語が本当に描きたかったものについて深掘りします。
この結末のカップリング、納得いかないけど説得力はあります。
拓実が最終的に選んだのは、精神的な余裕のある「話を聞いてくれる」菜月でした。一方、この段階で順は自分のことばかり。クラス全体よりも自分優先。いってしまえば「自分の声」しか聞く余裕がなかったわけです。
現実に2人の女性が存在していたとしたなら、ほとんどの男の子は菜月を選ぶのではないかな……と思うのです。
さらに、ラストシーンで、順は野球部の田崎と新たな恋の始まりを予感させているため、この一連の恋愛は、未熟だった順が魅力的な女性への第一歩を踏み出す余韻で締めくくられています。
本作はあくまでシビアなテーマを貫いているのです。というわけで、「この結末、リアルで逆に良いかも」などという余韻が広がっていきました。
ハンデ乗り越えた順は、今後、魅力的な女性に成長していくことでしょう。
『あの花』との関係性とは?
本作は、アニメ映画『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のメインスタッフによって制作されています。
- 長井龍雪(監督)
- 岡田麿里(脚本・キャラクターデザイン)
- 田中将賀(キャラクターデザイン)
映画『心が叫びたがってるんだ。』作品概要
| 項目 | 詳細 |
| 作品名 | 『心が叫びたがってるんだ。』 |
| 公開日 | 2015/9/19 |
| 制作国 | 日本 |
| 上映時間 | 119分(1時間59分) |
| 監督 | 長井龍雪 |
【主な登場人物とキャスト】
| 登場人物 | キャスト | 特徴 |
| 成瀬 順(なるせ じゅん) | 水瀬いのり | 言葉を封印されてしまう少女。元々はお喋りだった。 |
| 坂上 拓実(さかがみ たくみ) | 内山昂輝 | ピアノが得意。面倒ごとを避けるタイプで、本音を言わない。 |
| 仁藤 菜月(にとう なつき) | 雨宮天 | チアリーダー部。密かに坂上に想いを寄せている。 |
| 田崎 大樹(たざき だいき) | 細谷佳正 | 元野球部のエース。大会目前で肘を怪我した。 |
まとめ:『心が叫びたがってるんだ。』が「気持ち悪い」「納得いかない」と言われる理由
本作の結末に気持ち悪い・納得がいかない理由をまとめてみました。
順のキャラクターの違和感や、順と拓実の恋の結末……私も「これでいいの?」と感じました。
しかし、このモヤモヤが残るからこそ、考えさせられる作品になっているのもまた事実。
このシビアな結末こそが、言葉の暴力から再生への第一歩を踏み出すという、本作のテーマを表しているといえるでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。