映画『唄う六人の女』は、美しい映像とは裏腹に「意味が分からない」「結局なんだったの?」という声がとても多い作品です。
この記事では、
- 六人の正体(動物の化身)
- なぜ“かすみと同じ顔”の女が存在するのか
- 一本だけ生えてきた胸毛の意味
- クモや森が象徴しているもの
- 物語が本当に伝えたかったこと
など、鑑賞後に抱きがちな疑問をすべて整理して解説していきます。
以下、ネタバレを含みます。
映画『唄う六人の女』のあらすじ(簡潔に)
起: 主人公・萱島森一郎(演:竹之内豊)は亡くなった父の遺産の山林を売却するため、故郷へ戻ります。
承: 帰り道で事故に遭い、意識を失います。気づくと、萱島は六人の女に囚われていました。
転: 奇妙な女たちと過ごすうち、萱島は父の遺志と森の“異質さ”に気づき始めます。
結: 女たちの正体が明かされ、森を守るという父の願いと主人公の役割が交差していく。
六人の女の正体は何の化身?
エンドロールで明かされる「化身の動物(植物)」は以下のとおりです。
| キャスト | 化身の動物(植物) | 作品内の伏線 |
|---|---|---|
| 水川あさみ | ハチ | お味噌汁の具が昆虫 針のような武器 蜂蜜のお裾分け |
| アオイヤマダ | ナマズ | 水中での登場 地面を這う動き |
| 服部樹咲 | シダ植物 | 基本的に動かない 緑色ワンピース着用 光合成の描写(シダ植物のカットが入る) 胸元の胞子のような模様 |
| 萩原みのり | マムシ (クサリヘビ科の毒蛇) | 毒牙をもっている 攻撃性 蛇化の描写 |
| 桃果 | フクロウ | 野生動物を食す 穏やかなで大人しい 卵を産む |
| 武田玲奈 | ヤマネ (げっ歯目ネズミ科の小哺乳類) | 初登場前に、ヤマネが映り込む |
本編では明言されませんが、森の生態系が“人の女の姿”をとって現れていました。
【唄う六人の女】「意味が分からない」あのシーンを徹底考察
1.ヤマネの化身が“かすみと同じ顔”だった理由

ヤマネの化身とかすみ(演:武田玲奈)が同じ顔をしていたのは、自然破壊や開発がもたらす影響を観客に強く印象づける狙いががあったからだと考えられます。
環境汚染により動物の暮らしが脅かされても、人間はさほど罪悪感を抱きません。
しかし、その動物が人の形をしていれば(大切な人なら尚更)、その重大さを“自分ごと”として受け止やすくなります。
ヤマネが“親子連れ””絶滅危惧種”であることからも、『守られるべき命』を象徴する存在として、主人公の彼女の姿をとって現れたのだと読み取ることができます。
2.萱島の胸元に1本だけ濃い毛が生えた理由は?

劇中で萱島の胸に生えた1本の濃い毛は、いわゆる 「福毛(宝毛)」 と呼ばれるもの。「幸運が訪れる印」「願いが叶う印」とされています。
“父親が人生をかけて守ろうとした土地を守りたい”という萱島の願いが叶う予兆として、毛が生えてきたと考えられます。
3.森の正体とは?結末が意味するもの
物語の舞台となる森は、“現世とあの世の境にある異界”のような場所だと考えられます。
伏線は以下です。
- 萱島が交通事故に遭ったときに辿り着いた
- 水辺を越えると急に場面が切り替わる描写
- 森を抜けられず、堂々巡りになる
ラストシーンの「守れなくてごめん」という萱島のセリフから推測するに、6人の女たちは冒頭で既に亡くなっている可能性が高いです。
彼らは、あの世に召される前に、動物の化身として姿を変え土地主の元に現れ、“この森を守ってほしい”というメッセージを伝えにきたのかもしれません。
4.作品から読み取くメッセージ
「自然と人間は切り離せない」
主人公が幼少期、自然に助けられた過去がラストで回収されるように、人は自然に生かされてきました。
つまり、核開発などによって森を失うことが、結果的に“自分自身を傷つけること”となるのです。
無自覚な破壊の先には、とんでもない未来が待っているはずです。
映画『唄う六人の女』を観た筆者の感想
本作は、物語全体を通し、「自然との共存」というメッセージを寓話的に描いた作品。
「わざわざ、人間がこの地球に生まれた理由はなんなんだろう?」
そういった作者のような想いがダイレクトに伝わってくるようでした。
印象的だったのは、萱島が自らを犠牲にして使命をなしとげるラストシーン。
その瞬間、ハチとフクロウは、萱島の遺体に寄り添ったり動揺したりするのかと思いきや、スン…と部屋の奥へ入っていきます。
動物からしたら、萱島の行いはマイナスを0にしただけ。ようやく嵐が過ぎ去っただけ。人間そのものが厄災のカテゴライズなのかな…と想像力を働かせてくれます。
人は自然や動物に癒されるけれど…「逆もしかり」とはいきません。
「人と自然が共存できる未来がいい」強くと思いました。
因みにロケ地は南丹市美山の芦生の森だそうです。美しい自然でした。
映画『唄う六人の女』の作品情報
| 作品名 | 『唄う六人の女』 |
|---|---|
| 公開日 | 2023年10月27日 |
| 制作国 | 日本 |
| 上映時間 | 112分(1時間52分) |
| 監督 | 石橋義正 |
まとめ:映画『唄う六人の女』の化身、意味が分からないシーンについて考察
今回は映画『唄う六人の女』について考察してみました。
- 唄う六人の女の正体:なんの動物の化身?:水川あさみ/ハチ(蜂)、アオイヤマダ/ナマズ(魸)、服部樹咲/シダ植物、萩原みのり/マムシ(蝮)、桃果/フクロウ(梟)、武田玲奈/ヤマネ(山鼠)
- ヤマネがかすみと同じ容姿の理由:観客たちに、自分事として捉えてもらう狙いがあった。
- 胸元に1本濃い毛が生えてきた理由:「福毛(宝毛)」と呼ばれ、願いが成就することを予兆するメッセージ。
- 森の正体と、メッセージ:現世とあの世でもない異界で、自然と共存することの大切さ。
この記事が鑑賞後のモヤモヤを解消する手助けになれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。