映画『ザ・ハント』は、2020年にアメリカで公開された社会的風刺を取り入れたサバイバル・ホラー映画です。
『ザ・ハント』では、豚が象徴的です。豚の登場シーンは主に3回あります。
この記事では、
- 豚の意味
- クリスタルの正体
- ドンはどっちの見方なのか
- スノーボールやうさぎの意味
など、観賞後に気になる疑問をネタバレありで徹底考察・解説しています。
筆者の感想も載せていますので、もしご興味ある方は最後までご覧くださいませ。
映画『ザ・ハント』の作品情報
| 作品名 | 『ザ・ハント』 |
|---|---|
| 製作国 | アメリカ |
| 上映時間 | 1時間29分 |
| 監督 | クレイグ・ゾベル |
簡単なあらすじ・ストーリー
複数の男女が眠らされている間に誘拐され、見知らぬの場所で「人間狩り」のターゲットとして命を狙われるサバイバルスリラー。
主人公・クリスタルは優れた戦闘能力でいくつもの危機を乗り越える。主犯アテナと対峙する中で、この狩りの真相に辿り着く。
主な登場人物・キャスト
- クリスタル:ベティ・ギルピン……本作の主人公。ハンターのターゲット。
- アテナ:ヒラリー・スワンク……『ザ・ハント』の首謀者。
- ゲイリー:イーサン・サプリー……ハンターのターゲットとして連れてこられたうちの1人。『ザ・ハント』の噂を50人の友人たちに拡散した。
- ドン:ウェイン・デュヴァル……一ハンターのターゲットとして、いち早く移民キャンプで保護されていた人物。
映画『ザ・ハント』の豚の意味は?徹底解説

豚の意味1:狩られる存在
まずひとつめの豚の意味は「狩られる存在(世界のルール)」の象徴だと考察できます。
本編で豚が登場するシーンは全部で3度あります。
- 1度目の豚の登場シーン:冒頭で、ハンターたちが見つめる木箱から登場するシーン。豚は優雅に服をまとっている。
- 2度目の豚の登場シーン:豚は服を脱いでいる。
- 3度目の豚の登場シーン:豚が死亡する。
本来、キリスト教では、豚は汚らわしいとされています。また、豚は人間の手によって作られた動物。食糧として飼いやすくするため、イノシシから品種改良されました。それなのに、最初の登場シーンでは、人間よりも優遇されているのが不気味です。
食用として狩られてきた豚の命が尊重され、人間たちが狩られる立場。常識が覆っています。
つまり、豚の登場が「合図」となり、これまでのマナー(常識)が通用しないステージ「ザ・ハント」の世界へ誘われるのです。
さらに、物語の中盤では豚は本来の姿で登場し、最後の登場「豚の死亡」を境に、クリスタルが優勢になります。
これらのことから、豚は“ハンターに狩られる存在”を象徴しているといえるでしょう。
豚の意味2:無実の犠牲者(スノーボール)
ふたつめの豚の意味は、「無実の犠牲者(スノーボール)」です。
※『ザ・ハント』の中で、アテナがクリスタルを「スノーボール」と呼ぶシーンがあります。
スノーボールとは?
この「スノーボール」という呼称は、ジョージ・オーウェル作の「動物農場(原題:アニマルファーム)」という実在するイギリスの小説に登場するオス豚の名前からとられたものです。
評価の高い作品で、1945年には和訳版が刊行されています。
『動物農場』におけるスノーボールは、理想主義的で革命を目指すリーダー。しかし仲間に裏切られ、追放されてしまうキャラクターです。
小説の中のスノーボールは、まるでアテナそのものの生き様でした。
映画『ザ・ハント』クリスタル(本人)の正体は、教養のない一般人
クリスタル(本人)の正体は、クリスタル(主人公)と同じ街に住んでいる、同姓同名の誰かです。
教養がなく(スペルミス・噂を鵜呑みにするなど)、人格者でもありません。
「殺っちゃえ!」と過激な発言をするタイプであることから、ネットリテラシーの低い人物であることが分ります。
クリスタルは人違いだった!

まさかの「人違い」。
クリスタルは、小説『動物農場』の読者で、アテナのことを理解していました。アテナはその事実に驚きます。
なぜなら、本当の犯人・クリスタルが教養のない人物なのは、彼女の投稿内容から明らかだからです。
アテナが最期に「あなた本物のクリスタルよね?(人違いなの?)」と質問したのは、確認すると同時に救いを求めたのかもしれません。
もしクリスタルが最後に「本人よ」と応じたのなら、真実か、亡くなる敵への慈悲なのかふたつの説が生まれます。
が、……クリスタルは一貫して「人違いだ」と断っています。
(復讐心など)すごく虚しいね、というメッセージが含まれていると思います。
クリスタル(主人公)の正体は?

主人公・クリスタルの正体は真のサバイバーといえます。謎に包まれた存在です。
物語を通して、彼女の背景についてはほとんど語られません。クリスタルのフルネームや詳細な過去、なぜこの「人間狩り」に巻き込まれたのかについてはラストまで曖昧なまま……。
重要なのは、クリスタルの内面です。彼女は単なる被害者ではありません。
他の登場人物たちは、社会的な偏見やステレオタイプによって行動しがちですが、クリスタルはそうした偏見に惑わされず、自分の意志に従い、見事に反撃しました。
この点で、「真のサバイバー」と言えるのではないでしょうか。
アテナも被害者だった

アテナは、ネット上で人格否定された被害者です。
引用元:映画『ザ・ハント』「異常かな。でも自覚してる。自覚してるってのは正常ってこと。つまり私は、キレてるだけ」(アテナ)
「人間を狩る」という悪趣味なイベントを開催している割に、人をもてあそぶような演出がないため違和感がありました。たとえば拷問や、仲間同士で戦わせるなど。
事件の背景に犯人の動機を感じられなければ、犯人の仲間たちが店主や難民の配役になりきる理由も意味不明です。
その意味は最後に明かされます。アテナには、彼らがネット上で噂する世界(マナー・領地)を成立させてやるという狙いが根本にあったのだと。
残忍性は持ち合わせてなかったものの、プライドを傷つけられたアテナは、「後悔させたい」「自分の正しさを証明したい」と沸々としているうちに本当の化け物になってしまったのでしょう。
ドンはクリスタルの味方なの?
ドンはクリスタルの味方だった可能性があります。少なくとも敵ではありません。
道中、ドンがクリスタルを狩るチャンスはいっぱいあったにも関わらず、彼はそうしませんでした。
映画の中盤から後半にかけて登場するドンは、クリスタルとともに行動するキャラクター。しかし、ドンが本当に信頼できる味方なのかどうか――最後まで曖昧なままです。
ドンの行動や態度にはどこかぎこちなさがあり、クリスタル自身もドンに対して完全に信頼しているわけではありません。ドンも、ハンターたちの策略によって送り込まれたスパイである可能性があるのです。
しかし、アテナがドンの味方ではなかったことは明らかです。
最後のシーンでは、アテナが「ドンを仲間と思わせた」と告白していたり、
ドンをコールネームで呼ばない点など、軽率で愛情を感じられませんでした。(そして、ドンは本名を名乗ったのですね……涙)
ドンが「(敵の一人に)借りがある」と打ち明けていたことから、アテナは彼の恩義を利用していたといえるでしょう。首謀者たちはセレブなので、金銭面で援助を受けた過去があるのかもしれません。
ドンのキャラクターは、富裕層によって仕組まれた疑念がどれほど人間関係を破壊するか象徴された存在だったと考えられます。
最後のウサギの意味は?
映画のラストシーンで登場するウサギは、クリスタルの勝利の瞬間に現れることで、「運命にあらがい勝利したことを強調している」と思われます。
童話『うさぎと亀』の運命では、ウサギは負けてしまいます。しかしクリスタルは、自らの力でその運命を覆しました。
さらに、ウサギの存在は、クリスタルがかつての自分らしさ取り戻すことを予感させてくれます。
出典元:映画『ザ・ハント』「自分になれる私はレンタカーの会社に勤めてる。つまらない仕事よ。でも今日はもしかしたら、ひょっとして……」(クリスタル)
クリスタルは、『ザ・ハント』で運命から逃げ、勝利を収めました。
映画『ザ・ハント』のネタバレ感想
こ、恐い

主要人物だと認識したキャラクターが次々にあっさり死んでいくのが怖すぎます。
冒頭で亡くなった男性が回復して故郷へ帰る奇跡を祈りましたが無駄でした。
特に、最初に主人公格になる純粋な少女と、正義感に溢れた男性が亡くなるシーンは辛かったです。男性が地雷を踏んだあとに死を悟った表情になるのがリアル……(汗笑)。
そのあとに串刺しになって亡くなってしまう中年女性の「(殺してくれないなんて)この意気地なし!」というセリフも胸に刺さる。
本来は死を選びたくないという屈辱から、“せめて自死ではなく善人の手にかかって死にたい”という想いがあったのだと思います。
色々とリアル。
グロさに関しては、視界を隠したり飛ばしたりしないと観れないレベルです。
因みに、のちに調べてみたところ、どうやらクリスチャン=自殺はダメという教えはないようで安心。(しかし、どうせなら、とことん感情を揺さぶってほしかった気も……笑)
クリスタルが強くて魅力的だった
クリスタルが魅力的!クールなだけでなく、ユニークさもあるのがいい(「この話を信じるか?(ゲイリー)」「友達がいるってこと?(クリスタル)」)
クリスタルは元軍人でサバサバした性格だったので……誰かと行動するのは足手まといになりかねません。
そんななかゲイリーと旅を共にしたのは、力を合わせて助かろうとするためなのか?、それとも自分が守ってやろうという使命感からなのか?
もし前者だったら可愛いなぁと。後者であればつくづくつれない女です。
誰が悪くて誰が被害者なのか?
誰が悪くて誰が被害者なのか曖昧な点もひとつの魅力でした。
それぞれが自分を正義だと感じていたのは確かです。
気になったのが、キャビンアテンダント(CA)さん。彼女も被害者だったのでしょうか?
キャビアを分けてもらえていないあたり、格差を感じましたが……。最初から最後までオドオドしてましたね。怯えか罪悪感か……?
背景が気になる登場人物たちでばかりでした。
映画『ザ・ハント』の豚の意味やクリスタルの正体についてまとめ
今回は映画『ザ・ハント』についてネタバレありで徹底考察してみました。
もう一度まとめると、
- 豚の意味は?……世界のマナーが変化する象徴。豚のキャラクター「スノーボール」にかかっている。
- スノーボールの意味は?……イギリスの小説『動物農場』に登場する豚のキャラクター。
- 最後のうさぎの意味は?……童話『うさぎとかめ』のうさぎにかかっている。クリスタルの勝利を称えている。
- クリスタルの正体は?……人違い。
- ドンは味方だったの?どっち?……味方だった可能性あり。少なくとも中立的な立場だった。
という結果となりました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
またどこかの作品でお会いしましょう。