実話ベースの華やかなミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン(原題:The Greatest Showman)』は、ショービジネスで成功を収めたPTバーナムの波乱万丈な人生を描いた作品。
本作には、
「アンの障害は?」「りんごを渡した人は誰?」「何を伝えたい映画なの?」
といった疑問が多く寄せられます。
この記事では、
- アンの“障害”とは何か
- りんごを渡した人の正体とシーンの意味
- 映画が伝えたいメッセージ
を、作品の描写から分かりやすく深掘りしていきます。
※本記事にはネタバレが含まれます。未視聴の方はご注意ください。
映画『グレイテストショーマン』ストーリー・あらすじ
家族の幸せを願うバーナム(演:ヒュー・ジャックマン)は、唯一無二の個性を輝かせる華やかなショーで成功を収める。
欧州の歌姫ジェニー(演:レベッカ・ファーガソン)と共に全米を魅了し名声を得るも、その野心は、築き上げたすべてを失いかねない波乱を呼び寄せる。
アンの障害とは?映画が描く「社会の闇」

アン・ウィーラーに身体的な障害はありません。
アンが抱えていたのは、19世紀アメリカに残っていた“人種差別”という社会的な障害です。
視聴者の一部が“彼女にも何か障害があるのでは?”と感じてしまうのは、「アンが異質とされるサーカス団の一員として扱われている」からです。
では、なぜアンは身体的な障害がなかったのにも関わらず、サーカス団の一員だったのでしょうか。
19世紀アメリカの黒人差別という“社会的障害”
この映画の舞台、19世紀アメリカは、奴隷制度が廃止された後も黒人への差別が色濃く残っていた時代です。
※奴隷制度:主にアフリカから連れてこられた人々が、自由や権利を奪われ、強制労働させられていました。
実際に、肌の色が違うだけで職業の選択肢が限られ、同じ空間に入ることすら許されない場面もありました。
少ない給料で大変な仕事をしなければいけなかったり、理由もなくリンチに遭ったりすることもありました。
そのためアンのように見た目に何の障害もない人でさえ、“異質な存在”としてサーカス側に回されてしまうほど、社会的な偏見が強かったのです。
劇中でアンが人種差別に悩むエピソードとしては、アンが兄弟でP.T.バーナムの一員として申し込む際に「(観客に)嫌われないかな?」と心配したり、身分違いの恋愛に苦しんだりするシーンがありました。
「りんご渡した人」の障害・意味は?深堀考察
1.りんごを渡した人の障害とは

りんごを渡した女性の障害は「トリーチャー・コリンズ症候群」です。
「トリーチャー・コリンズ症候群」とは、顔の骨がうまく成長しないことで、特に頬骨や下あごに異常が現れる遺伝性の病気です。
この病気の特徴として、顔の変形、呼吸障害・摂食障害・難聴などがあります。(※個人差があります。)
2.りんごのシーンがもつ意味
りんごを渡したシーンは、P.T.バーナムが仕事の発想(障害を持った人々は観衆の興味を惹く)を得る重要なシーンです。
幼少期、お腹が空いてパンを盗んでしまったP.T.バーナムは、差し出してもらったりんごよりも彼女の顔の方に見とれてしまいます。
その後大人になり、小人症の青年と出会ったときにもつい見てしまうことで確信したのです。
また、不憫な少年に手を差し伸べてくれたのは障がい者だったという事実により、内面の素晴らしさは障害のある・なしに関わらないということを教えてくれます。
りんごを渡した彼女がマントを深くかぶり、全身を黒に包んでいることから、ひと目を避けて生きていることが読み取れますね。
周囲から差別されてきたからこそ、他人の痛みを理解できたのではないでしょうか。
サーカス団員の障害・特徴一覧(種類と役割)
| 名前 | 障害の種類 | 役割 |
|---|---|---|
| ペテン王子 (P.T.バーナム) | ― | 興行師 |
| フィリップ・カーライル | ― | 興行師 |
| 親指トム将軍 (チャールズ・ストラットン) | 小人症 | 馬乗り |
| 熊女 (レティ・ルッツ) | 多嚢胞性卵巣症候群 | ボーカル |
| アン・ウィーラー | ― (人種差別) | 空中ブランコ |
| W.D.ウィーラー | ― (人種差別) | 空中ブランコ |
| 全身入れ墨男 | ― | ― |
| 犬少年 | 多毛症 | ― |
| 世界一の巨漢 | ― (肥満) | ― |
| アイルランドの巨人 (オー・クランシー) | 巨人症 | ― |
| チャン&エン | 結合双生児 | ― |
| ― | アルビノ | ― |
熊女の障害「多嚢胞性卵巣症候群」について
熊女の「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」という病気は、卵巣の中で卵子が正常に育たないことが原因で起こります。女性の約5~15%に発症するとされています。
ホルモンバランスの乱れにより、以下の症状が現れることがあります。
- 多毛症
- 肥満
- ニキビ
- 声が低くなる
- 血糖値上昇
- 生理周期の異常
- 乳房が小さくなる
- 筋肉量の増加
なお、これらこれらの症状には個人差があり、レティ・ルッツの場合は多毛症の症状が色濃く出ていました。
映画『グレイテスト・ショーマン』が伝えたいこと

1.光(称賛)を求めすぎる危うさ
映画『グレイテスト・ショーマン』は、光(称賛)を求めようとするあまりに大切なものを見失ってはならないという教訓を伝えてくれます。
P.T.バーナムは貧困のせいで、周囲の人々から相手にされず育ってきました。このことから金や地位などの亡者となっていくのです。
しかし幸せの本質はそこにありません。妻のいうように「あなたの大切な人に認められればそれでいい」のです。
ラスト、P.T.バーナムがサーカス団を手放しましたが、以前と変わらない笑顔がそこにありました。
幸せはすぐ傍にあったのです。
2.多様性を受け入れる社会の大切さ
また、多様性を認めることの大切さを伝えてくれます。
彼らは姿形違えど、同じように喜び、苦しみ、より人間らしさを持っていました。
映画『グレイテストショーマン』を筆者が観た感想
史実映画なので衝撃的です。
P.T.バーナムは才能に溢れた人物だったのですね。借金や無一文でも果敢に挑み続けるのがスゴイと思ったし、統率力や企画力など含め、多才だったのだなぁと。
P.T.バーナムが自分しか頼れない貧困時代、地位のせいで好きな人に近づけない苦しみ、娘に「本物じゃない」と言われバレエを諦めさせてしまった苦しみ、いろんなものが燃料となり彼を突き動かしていたのだろうな。
「りんご渡した人」のシーンや、P.T.バーナムが成功を収めたあとに、妻の父親と和解できないシーンが印象的でした。あの眩しかった少年が、かつて当人が嫌っていた大人のように見えましたね。
父親が娘を送りだしたシーンでは、理解ある親という印象を受けましたが、おそらくシナリオでは描ききれなかったひどい仕打ちがもっとあったのでしょうね。
“あなたがいれば何もいらない、荒波に飛び込んでいく”、と妻に思わせるP.T.バーナムも、
そうして夫を支えて成功させるチャリティ・バーナムも、どちらも魅力にあふれた人物だったのだろうなと思いました。
気まずいシーン:なし
グロイシーン:なし
まとめ:映画『グレイテスト・ショーマン』アンの“障害”・りんごを渡した人について
この記事では映画『グレイテスト・ショーマン』について、主に以下の3点について考察しました。
- アンの障害について:アンは人種差別という障害を抱えていました。
- 「りんご渡した人」について:障害名は「トリーチャー・コリンズ症候群」。彼女がりんごを渡すシーンには、P.T.バーナムが仕事の発想を得た切欠や、人の価値は障害の有無で決まらないという重要なメッセージが含まれています。
- 映画『グレイテスト・ショーマン』が伝えたいこと:本当に大切なものについて、多様性を受け入れることの大切さなどを伝えてくれます。
本作は、人生を生きるうえで本当に大切なことをわたしたちに教えてくれます。