今回は小説『変な絵』についてです。
『変な絵』の原作者は、人気YouTuber・ホラー作家の雨穴さんです。
大ヒットを記録した『変な家』の第二作目となり、大変話題となっています。
手に取って読んでみたところ、とても面白かったので個人的に考察してみました。
ということで本記事では、
「佐々木はどうなった?」
「ブログを消した理由は?由紀はなぜ逃げない?」
「BBQや栗原の足のケガについても気になる!」
について解説&ご紹介していきたいと思います。
もし『変な絵』についてご興味あるという方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
以下、ネタバレが含まれます。
読後にご覧になるのをお薦めします。
【変な絵】あらすじ・ストーリー
とあるブログに投稿された『風に立つ女の絵』、消えた男児が描いた『灰色に塗りつぶされたマンションの絵』、山奥で見つかった遺体が残した『震えた線で描かれた山並みの絵』……。 いったい、彼らは何を伝えたかったのか――。9枚の奇妙な絵に秘められた衝撃の真実とは!? その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる! 今、最も注目を集めるホラー作家が描く、戦慄の国民的スケッチ・ミステリー!
双葉社│Futabasha Publishers
【変な絵】主な登場人物
■佐々木修平…栗原の先輩。オカルトサークル所属。
■今野武司…変なブログ(「七篠レン心の日記」)の管理人。
■今野直美…武司の母親。
■今野由紀…武司の妻。他界している。
■今野優太…武司と由紀の息子。
■米沢美羽…優太の保育園のお友達。
■三浦義春…今野直美の夫。
■豊川…三浦の大学の同級生。
■熊井勇…元記者。
■岩田俊介…熊井の後輩。三浦が恩師。
【変な絵】栗原は何者?
小説『変な家』『変な家2』にも登場する「設計士・栗原」です。
本書では、学生時代が描かれています。
栗原はのちに、雨穴さん(原作者・オカルトライター)の相談者となります。
オカルト・ホラー愛好家です。
優れた推理能力を持ちます。
栗原さんの学生時代を知ることができる貴重な小説です。
(架空の人物です。)
本記事では、『変な家』の原作者・雨穴さんの正体についてです。「経歴・素顔・性別・好きなもの・尊敬する人」などについて分り…
【変な絵】佐々木はどうなった?栗原に追いつけなかったのは何故?考察
佐々木がどこまで走っても栗原と再会できなかったのは、追ってる途中で事故などで亡くなっている可能性が高いです。
理由を以下に解説していきます。
「じゃあ、真相がわかったら教えてくれよ」
小説『変な絵』│第一章「風に立つ女の絵」
「はい。必ず」
佐々木は、栗原に会いたくなった。栗原の解釈を聞きたかった。
小説『変な絵』│第一章「風に立つ女の絵」
方向転換して、元来た道を走り出す。まだ遠くには行っていないはずだ。
しかし、どこまで走っても、栗原と再会することはできなかった。
「…以前、大学のサークルの先輩に言われたんです。『ブログの真相がわかったら教えてくれ』って。その人、もう学校を卒業しちゃったんですけど、いつか再開したら、約束を果たしたいと思っています。そのときのために、事件には円満に解決してもらわなきゃ困るんです。そうじゃないと、気持ちよく話せないでしょ?」
小説『変な絵』│第四章「文鳥を守る樹の絵」
これらの引用文章から、卒業まで佐々木と栗原は再会していないことが分かります。
しかし、佐々木は引き返して栗原を追いかけたほど「ブログの解釈」を気にしていたのです。違和感ですよね。
もし「方向転換」したのが信号を渡り終えたところだったら…。
つまり、佐々木は栗原に聞きたくても聞けなかったのです。
佐々木は「3月になったから卒業」したのではなく、「亡くなったから卒業」せざるをえなかったのです。
そして「いつか再会したら約束を果たしたい」というのは「冥途の土産話」ということなのです。
『じゃあ、真相がわかったら教えてくれよ』
このセリフは、別れる直前に栗原にかけられた、佐々木の最後の言葉です。
入院先の病院で、「なぜそこまで肩入れするのか」と熊井から不思議がられていますが、栗原が肩入れする理由はそこにあったのです。
【変な絵】ブログを消した理由は?考察
武司が「母親(直美)を愛していたから」です。
「母さんへ」ではなく「一番愛する人へ」とした意味
以下、解説していきます。
『一番愛する人へ』2012/11/28
今日で、このブログを更新するのをやめます。
あの3枚目の絵の秘密に気づいてしまったからです。あなたがいったいどんな苦しみを背負っていたのか、
僕には理解することはできません。
あなたが犯してしまった罪がどれほどのものなのか、
僕にはわかりません。
あなたを許すことはできません。それでも、僕はあなたを愛し続けます。レン
小説『変な絵』│第一章「風に立つ女の絵」
一般的に、遺書は誰宛てか明確にしますよね。
「愛する〇〇へ」などいくらでも書きようがあるのに違和感です。
本文も「あなた」と曖昧です。
何故かといえば、第三者に“誰に宛てたか読まれないようにするため”だと考察できます。
武司は母親に「罪に気がついた」「由紀が気づいていた」ことはどうしても知らせたかった筈です。許せなかったからです。
一方で、母親を愛していました。
「出産後」のブログには、助産婦を務めたのが母だということや、母と子育てを奮闘する日常が書かれていた筈です。
第三者にブログを読まれたときに、その部分だけを消しておけば「罪」があるのは「亡き妻」だと思いこませることができたのです。仮に、3つの絵の意味に気づかれたとしても「助産婦が母」である事実を隠せます。
「週4~5回の更新」とありますが、出産前でも、母が出てきた日記は消されている可能性は十分あります。
なんにしろ、本当の意味に気がつくのは、母親だけで良かったのです。
気づいた翌日に自死しているのは、
このまま生きていたら母親を憎んでしまうからのように思えます。
「許せないけど愛し続けます」
これらの気持ちが、このブログを一部消したことと、自死につながったのだと思います。
【変な絵】由紀が逃げない理由は?考察
由紀がなぜ逃げないのか、理由は2つあります。
- 武司がマザコンだから
- 帰る場所がないから
以下、解説していきます。
旦那・武司に訴えたら2人から責められ居場所がなくなってしまいます。
傍にいた由紀には、武司のマザコンぶりが身に染みていたはずです。
由紀は直美を真似ていました。三浦のことを愛していたからです。
由紀も直美も、黒髪ロングの美人。
「あ! でも、だからといって、三浦先生の代わりとして、武司くんを見てるわけじゃないんです。武司くんは武司くんとして愛しています」
小説『変な絵』│第四章「文鳥を守る樹の絵」
案外、面影を見ていたのは、由紀より武司のほうだったのかもしれません。
一方、由紀がよそへ逃げるにしても、助けを求める場所はありません。
何故なら、実家とは絶縁状態だったからです。
由紀は、お腹がふくらんだ妊婦です。
由紀に残された希望は「義母・直美の企みが失敗して助かったとき」のみだったのです。
【変な絵】最後の意味(BBQ)は?考察
最後のBBQでは、2人の父親の教育方針の違いが明確にされていました。
事件が一段落したあとに、米沢家のBBQのエピソードが挿入されていますね。
これまでさほどスポットが当たっていなかったのにも関わらず、米沢一家がフォーカスされているので、意味深ですよね。
最後のBBQのシーンでは、愛情深い点は同じ父親二人の教育方針の違いについて、分かりやすく対比で描写されています。
以下、解説していきます。
美羽がすごく優しいですよね。
母が末期がんですごく辛いはずなのに、いつも明るく見せています。
本当は繊細な子だからこそ、優太のことを気に掛けたり、「家庭にも色々あるのよ」なんて大人びたことを言ったりするのだと思います。
そんな子供たちの心を米沢父は理解していました。
米沢は知っている。子供は必要以上に、悲しみや不安に敏感だ。そして、大人と同じように、それを周囲に悟られないよう、必死に隠そうとする。美羽も優太も、きっと笑顔の奥で、耐えている。だからこそ、米沢は二人に伝えたかった。人生には、つらいことと同じくらい、楽しい出来事や、幸せな時間があることを。
小説『変な絵』│第四章「文鳥を守る樹の絵」
正に“この子にしてこの親あり”です。
今野直美も、元は親から虐待されていた被害者です。
もしこのような家庭で育っていたら、幼い頃の優しい心を持ち続けていたでしょう。
“正しい教育のありかたとは”…そのようなメッセージが感じ取れます。
米沢父と美羽の親子関係は、理想的のように見えます。
いずれ父子家庭になるでしょう、幸せになってほしいですね。
【変な絵】栗原が足をケガしていた理由は?考察
本作で唯一のオカルト要素だと思います。
以下、解説していきます。
今野直美の殺害方法は、“寝袋で就寝しているところ、足を石で何度もゴツゴツゴツゴツ!!!と殴った”と描写されています。
このことから、一見、
「栗原が事件解決のために片足を踏み入れ、今野直美に襲われかけたのでは…」
と想像できますね。
しかし、時系列で確認するとその可能性は無いことが分かります。
何故なら、熊井を刺して今野直美が拘置所に入れられたのが4月24日、栗原が足を怪我して入院したのが5月8日だからです。
なぜ…?
直接的でなくても、生霊や念の力が作用していないとはいえません。
「でも、よかったですね。今野直美を逮捕できて。これで岩田氏や豊川氏も浮かばれるというものです」
小説『変な絵』│第四章「文鳥を守る樹の絵」
栗原は「報道の内容から、今野直美が三人の男の殺害に関わったことは推測できる」としました。が、“三浦が浮かばれる”とは口にしていないところが不自然ですよね。
つまり栗原は、“三浦が絵を描いた理由”まで推理していたのです。
だからこそ、熊井に“優太の面倒をみること”を薦めたのでしょう。
佐々木も栗原も、『七篠心の日記』ブログの謎を解こうとしていたのです。
【変な絵】ネタバレ感想レビュー
『変な絵』は、殺害シーンでの辛い描写が多かったです。
生きたいと願う人たちが殺されるのは辛いですね…。
感情移入させるのが上手でした。
読みやすく、あっという間に読んでしまいました。
気になったのは熊井が、
- 記者として岩井に勝ちたい、プライド取り戻したい
- 死ぬかもしれないけれど、癌だから構わない
- 敢えて防弾チョッキを着ない
という理由で、直美にわざと刺すように仕向けるというやり方でした。
正義ではなく、エゴでした。
あとをつき回す…
直美に限らずとも、あのように男性に付け回されては、大抵のおばあちゃんは竦みあがるのでは…と思ってしまいます。子を守ろうとしたら必死になるでしょう。その点に関してはどれだけ怖かっただろう、と思います。
その一件については自己防衛がみなされても良かったと思います。
もし熊井が亡くなっていたら、本質的には殺人教唆だと思うので、後味悪いです。
さらに祖母を刑務所送りにした男が義父だと知ったとき、優太くんのメンタル大丈夫なのだろうか…と心配になってしまいました。まぁ、創作物語なのですが(汗)。
色々な感情をいただきました。
終わり方が温かくて良かったです。
【変な絵】栗原と佐々木/ブログ消した理由/BBQの意味など考察まとめ
今回は小説『変な絵』について考察してみました。
- 佐々木はどうなった?栗原と再会できなかった理由は?…佐々木が亡くなったから
- ブログを消した理由は?…武司が母を愛していたから
- 由紀はなぜ逃げないの?…親と絶縁状態で仕事も見つからず、逃げ場がなかったから
- 最後の米沢家のBBQの意味は?…二人の父親(今野・米沢)の教育方針の違い
- 栗原が足をケガしていた理由は?…オカルト的な要素を匂わせている
という結果になりました。
あくまで一個人の考察となりますが、ご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。