映画『本心』の原作(同名小説)から、物語の核心に触れる「名言7選」をご紹介します。
主人公・朔也が直面する「自由死」や「母の本当の姿」を理解する鍵となる言葉を、原作を読み込んだ筆者の視点で厳選しました。
ぜひ平野啓一郎氏の鋭くも優しい言葉に触れてみてください。
映画原作『本心』の作品情報
| 作品名 | 『本心』 |
|---|---|
| 発売日 | 2021/5/26(単行本) |
| 出版社 | 文藝春秋社 |
| ページ数 | 449ページ |
| 作者 | 平野啓一郎 |
【あらすじ】
『本心』は、近未来の日本を舞台にしたヒューマンドラマ。
主人公・朔也の母、秋子は突然「自由死」を選び、「大事な話がある」と言い残す。
幸せそうに見えた母が、なぜ自ら死を選んだのか。朔也は母のVF(ヴァーチャル・フィギュア)を使い、母の知られざる本心を探ることに。
朔也は母との日常を取り戻し、彼女の知られざる一面と対面する――。
原作の名言7選
名言1
僕たちが、何でもない日々の生活に耐えられるのは、それを語って聞かせる相手がいるからだった。
引用元:小説『本心』│平野啓一郎
主人公・朔也のモノローグです。
この名言は、「日常の意味を見出せるのは、誰かと共有しているから」ということを教えてくれます。
誰かに聞いてもらうことで、同じ日常でも特別な1日になるのです。一人ではなく、話し相手がいることの有難みに気がつかせてくれる名言です。
名言2
実際、母は僕に、よく「優しい」と言った。優しさとは、しばしば奇妙な、理解を絶した何かなのだった。損得勘定からも、理知的な判断からも逸脱した、不合理な何か。
引用元:小説『本心』│平野啓一郎
主人公のモノローグです。
「優しさ」は、損得勘定・理知的なものでは測れない人間らしい感情です。
そのため、あらゆる場面で便宜的に使用される言葉でもあることを気づかせてくれる名言です。
名言3
引用元:小説『本心』│平野啓一郎ほんと。……貧乏って、何が嫌かって、四六時中、お金のことばっかり考えてないといけないでしょう? お金持ちより、よっぽどそう。働いてても、買い物してても、こんなふうにごはん食べてても。
主人公と、ガールフレンド・三好のセリフです。
お金と縁のない貧乏人のほうが、四六時中、お金のことを考えているという事実があります。
お金に限らずとも、人はあるものより無いものについて考えがち。
経済的な不平等の一端を浮き彫りにしている名言です。
名言4
引用元:小説『本心』│平野啓一郎今、僕の人生を思って、心が搔き乱されるような人間は一人もいない。その事実は、僕のこの世界そのものに対する愛着を削ぎ続けてきた。
主人公のモノローグです。
この名言は、物事への愛着や情熱を持つのには、他者との繋がりがないと難しいことを伝えています。
人生を充実させる唯一の方法は、地位を得ることでもお金持ちになることでもなく、人との繋がりであることを教えてくれます。
名言5
引用元:小説『本心』│平野啓一郎──ふしぎなことだろうか? 結局、人は、ただ側にいるというそれだけの理由で誰かを好きになるのであって、逆に言えば、側にいる人しか好きになれないのだった。
主人公のモノローグです。
スクリーンの向こう側のスターに憧れることはできても、人間関係を育むことはできません。
もし限られた範囲に男女ふたりしかいなければ、そのふたりは恋に落ちる可能性が高いでしょう。
支えてくれるのはその人だけであり、比較対象もないからです。
「傍にいられる」ということが重要な条件であることを教えてくれる名言です。
名言6
引用元:小説『本心』│平野啓一郎問題は、「生きるべきか、死ぬべきか」ではなかった。――「方向性」としては、そう、「死ぬべきか、死なないべきか」の選択だった。
主人公のモノローグです。
「生きることを先に考えず、死ぬことを優先して考える」という逆転した視点。“自由死”の背景には、人間の深い苦しみや無力感、絶望が隠れていることを訴えている名言です。
名言7
引用元:小説『本心』│平野啓一郎〈母〉の中のAIが、どんな仕組みになっているのか、僕には今以てわからない。しかし、そのわからなさこそが、まるで、人の心のようだった。
主人公のモノローグです。
AIに「心がない」と証明することは難しいのは、人の心がどこにあるのか、意識とはなにか、明確に定義されていないためです。
わたしたちが考える「人間らしい」特徴を、かならず人間がもっているとは限りません。場合によっては、「心」があるように振る舞っているAIのほうがよっぽど人間らしいと考える人も出てくるでしょう。
なにをもって「人」「心」を定義するのか考えさせてくれる明言です。
原作のこれらの言葉を知ることで、映画のラストシーンの深みがより増します。
また、映画版のラストシーンで描かれた「最後の手」の意味については、こちらの記事で原作の背景をさらに深掘りして考察しています。
原作小説『本心』と映画の違いは?
筋書きに大きな違いはありません。しかし「違う」と感じる点はありました。
本心の原作との違いについてご興味ある方はこちらの記事をご覧ください。(ネタバレを含みます)
【平野啓一郎の書籍紹介】
- 『本心』:自由死が合法化された近未来日本で、AI技術により亡き母を再生した息子がその「本心」を探る心理SFドラマ
- 『マチネの終わりに』:天才ギタリストとジャーナリストの男女が運命的に出会い、すれ違いながらも深く惹かれ合う切ない恋愛物語
- 『ある男』:愛した夫が実は別人だったと知った妻の依頼を受け、弁護士がその男の過去を追う中で、人間のアイデンティティと愛の本質を探るミステリー。
- 『決壊』:エリート公務員が弟のバラバラ殺人容疑者として疑われ、社会的・家族的な信頼がネットの悪意とともに崩壊する現代犯罪小説
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映画『本心』の真相!「最後の手の意味は?」「母親(秋子)が自由死を選んだ理由は?」「主人公(朔也)は三好を愛していなかっ…
原作小説『本心』の名言まとめ
今回は、小説『本心(平野啓一郎)』の名言についてまとめてみました。
これらの名言を心にとめることで、実際に未来に起こりえるかもしれない「自由死」を選ばずにすむかもしれませんね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
