小説『いけない(道尾秀介著)』についてです。
本作は考察が面白いミステリー作品です。
日本でも中国でも10万部売り上げたベストセラーです。
皆さんは最後のページの仕掛けの真意に気づくことができましたか?
ということで本記事では、各章について考察・解説していきたいと思います。
※若干、情報が前後していますので、
全ての章を読了してからご覧になることをおススメします。
以下、ネタバレが含まれます。
【いけない】主な登場人物
- 隈島……刑事。邦夫の事件を担当している。
- 邦夫……不運な事故に遭い盲目となった。一人息子を亡くしている。
- 弓子……邦夫の嫁。大学時代に隈島と付き合っていた。
- 竹梨……隈島の後輩。隈島の元相棒。
- 代田……鑑識官。一人娘を亡くしている。
- 珂(カー)……来日した中国人の少年。名前が原因で虐められている。
- 山内……珂のクラスメイト。珂に恩返ししたいと考えている。
- 水元……新米刑事。竹梨の相棒。
- 宮下……宗教団体・十王環命会の幹部。営業担当。
- 守谷……宗教団体・十王環命会の支部長。
- 中川……宮下が住んでいたマンションの管理会社の代表。
【いけない】各章の真相は?ネタバレ考察・解説
考察1:「弓投げの崖を見てはいけない」
地図の意味は?
血で染まった地図の持ち主は隈島だということを示しています。
理由は、地図には「ゆかり荘」が手書きで記されていたからです。
考察2:「その話を聞かせてはいけない」
映像に映っている少年は誰?なにをしている?
映像に映っている少年は山内です。
理由は、山内はいつもHAPPYの文字のパーカーを着ているからです。
どういう意味?真相は?
珂は、“山内が絡んでくるのは嫌がらせ”だと思っていましたが、“山内は本当に心から恩返ししたいと思っていた”というオチです。
おそらく山内は、犯人の車の荷台に潜り込み、崖までついてきていたのです。
山内自身も、孤独な少年だったのではないでしょうか。
例えばいつも同じパーカーで、寝ている男性のお口にオシッコするくらいですから、親からの愛を受けれていないはず。
そんな最中、珂に助けてもらったことは彼にとってかけがえのない体験だったのでしょう。
考察3:「絵の謎に気づいてはいけない」
絵の意味は?
手帳の「犯人」の確信に触れる絵の部分を、あとから書きかえられていた……という意味です。
つまり、中川の推理通りでした。
どういう意味?真相は?
鑑識官の代田が乾かして、証拠を捏造しました。
恐らく代田は宗教団体の人間だからです。
因みに、なぜ宮下が殺されたのかといえば「女性・若くして幹部だった」というのがヒントになっています。
眼の上のたんこぶというやつです。
水元がなぜ殺されてしてしまったのかといえば、「絵の謎に気づいてしまったから」です。
「竹梨は音もない家から出た」とありますが、文字通り“音もない家”から出たのです。
考察4:「街の平和を信じてはいけない」
白紙の便せんの意味は?
奥さん(弓子)が白紙の封筒を渡したという意味です。
つまり、弓子は邦夫に自主してほしくなかったのです。
邦夫は盲目なので気づきませんでした。
どういう意味?真相は?
その後、二人の罪人の「自白文」の封筒が入れ替わったことで有耶無耶になったということです。
お互い自白寸前までいって、あと一歩のどころで踏ん切りがつかないのはなんともリアルです……。
「平和だね」と話している少年たち。
実は感謝している人が殺人犯だったり、そもそも警察のなかに殺人に関与している人がいたりして……「この街、平和じゃないよね」というオチです。
最後、邦夫は失ったものだけでなく、残されているものに目を向けることができたのでしょう。この点は良かったと思います。
メッセージとしては、少年たち――そして読者たちに「油断するな」ということではないでしょうか。
『いけない(道尾秀介著)』の真相は?ネタバレ考察と解説まとめ
今回は小説『いけない(道尾秀介著)』について考察・解説してみました。
- 弓投げの崖を見てはいけない……亡くなった人物は隈島だった。
- その話を聞かせてはいけない……映像に映っている少年は山内。
- 絵の謎に気づいてはいけない……「犯人」の確信に触れる絵の部分を、あとから書きかえられていた。
- 街の平和を信じてはいけない……奥さんは旦那に自主してほしくなかった。
という結果となりました。
こういう面白い謎解きを創作できる作者さんは本当に凄いですね。
わたしたちの街が平和でありますように。
ご参考になりましたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。