小説『近畿地方のある場所について』についてです。
本書は『カクヨム』という小説投稿サイトで発信されていた作品です。2023年08月に書籍化しました。
作家・背筋(せすじ)さんのデビュー作です。「リアルで面白い!」と話題になっています。
とても深く、読後に疑問が幾つか残った…という方も多いのではないでしょうか。
ということで本記事では、
「『近畿地方のある場所について』は実話?」
「最後の意味は?まさるの話は真実?」
「大量にお札を描いていた意味は?」
などについて考察していきたいと思います。
「どういう意味だろう?」と気になる方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
本記事は、読後の方を対象にしている記事です。
ネタバレが含まれますのでご注意ください。
【近畿地方のある場所について】実話?
小説『近畿地方のある場所について』は、実話ではありません。
モキュメンタリー・ホラーです。
※「モキュメンタリー(mockumentary)」…“本物のように演出する手法”
本書には「実話なのかな?」という噂があります。
つまり、狙い通りといえますね。
【近畿地方のある場所について】最後の意味は?考察
作者(背筋さん)は、“呪いを広めるために、この本を執筆していた”ということです。
以下、解説です。
作者(背筋さん)が、文中で「ごめんなさい」と謝っていることから、読者にデメリットがあるということがわかります。
助かるために必死でお札を作っても、ささやきはやみませんでした。
小説『近畿地方のある場所について』│背筋
でも、このお話を書いているときだけは、ささやきがやみました。
書き続けることだけが、私に残された助かる方法でした。
本の最後に“了”という記述があります。
作者(背筋さん)は、読者がいつ離脱してもいいように「これでこの話は最後です」と何度も話を切り上げていました。
赤いコートの女は、お札より強力な呪いをかけるために、
自身と似た作者(背筋さん)を利用しました。
つまり、“お札”に変わる“本”という呪いの媒体を作りあげた、ということなのです。
読み進めるにつれ怪異と深く縁を結んでしまうため「呪い」の影響を受けやすくなるのです。
作者(背筋さん)は、わが身可愛さに読者を身代わりにしたということです。
【近畿地方のある場所について】謎の男の子の正体は?考察
男の子の正体は、心を持たない怪異です。
命を食らうだけの存在です。
赤いコートの女が生み出した“我が子の代わり”です。
以下、解説です。
まずは「ましらさま」の誕生から見ていきます。
「ましらさま」の誕生
「ましらさま」と祀られているのは、元は人(まさる)の怪異です。
その昔、「まさる」という人間が亡くなった後に祟りがあったため、怒りを鎮めるために祀っていました。
美しい過去ではないため、子孫たちに教えるときには「ましらさま」と教えていたのです。
「ましらさま」とは大きな猿の神様です。
まさるの霊は自分が神様だと勘違いし、高次元の存在「怪異」となります。
(“ましらさま”の全身3メートルもある巨体という性質を引き継ぐ)
生前、まさるは嫁を貰えずに死んでしまいました。
その祟りで若い娘たちが死亡しました。
元々、札に書かれた「女」の意味は「ましらさま(怪異)」への捧げもの(嫁)の意味でした。
その結果、輿入れした少女は生きても死んでもいない状態になっていましたね。(奈良県で行方不明になった少女)
「男の子」の誕生
その後、赤いコートの女(あきらの母)が、あきらを蘇らせるために、石を盗みお札を「女」から「了(あきら)」と書き換えました。
これにより「了(あきら)の姿かたちをした怪異」が生まれました。
男の子の怪異が、首をかしげていたりプラプラさせているのは、あきらが首つりにより死亡したからです。
本書『近畿地方のある場所について』の文末にも使用されていた「了」。
赤いコートの女によって書き直された「了(あきら)」という漢字は、たまたま「終わる」という意味を持っていました。
これにより、男の子の怪異への捧げものが(赤いコートの女曰く“お友達”)は、亡くなってしまうのだと考察できます。
命を食らうだけの怪異です。
【近畿地方のある場所について】まさるの話は真実?神社の謎を考察
まさるは“鬼を鎮める贄として村人たちに殺害された”可能性が高いです。
編集長Sが、とある老人から「まさる」の人生と死に方を教えてもらったシーンです。
編集長に「今の話は本当ですか?」と聞かれた老人は、はぐらかすようにして去ってしまいました。
編集長が疑問に思った理由は、「まさるが祀られた神社が、“急ごしらえ”ではなく、宮大工など技術のある方がじっくり時間をかけて造られたもの」だということが目に見えてわかったからです。
その後、古びた看板が見つかっています。
由…
小説『近畿地方のある場所について』神社由緒看板
当社は…(中略)
天……降り……た、鬼……を喰…………され………
……鎮……た………祀…………………り…………。
…………よ…五…三日………鎮……祭………………れ……
この看板の「当社」という文字からは、やはりちゃんとした組織が時間をかけて神社を拵えたということが分かります。
また「鬼」という記述から、恐らく元々は鬼を鎮めるための神社だったのでしょう。
この状況から浮かび上がるのは、“「まさる」は生贄のために殺害されたのではないか?”という疑惑です。
まさるは母が死んで独り身でした。
さらに「柿あるよ、おいで」と声をかけたときに、「間違っているよ」と指摘してくれる人はいませんでした。最初から間違いを教えられてからかわれていた可能性さえあります。
このことから「仲間はいなかった」もしくは「いじめられていた」ことは明らかです。
また、自ら石に頭をぶつけて自害する人間などいるでしょうか。
まさるは、鬼の生贄のために捧げられた可能性があります。
こうして「贄がさらに贄を求める」状況ができあがったのです。
まさるは、鬼へ捧げる贄としてに殺害された可能性が高いです。
【近畿地方のある場所について】シール(お札)の意味は?考察
シール(お札)は、了(男の子の怪異)を育てるために必要なものです。
何故なら、捧げものは、怪異にとっての食事だからです。
捧げものをするにあたり、まずは呪いにかける必要があるのです。
赤いコートの女は「男の子の怪異」が我が子あきらだと信じているため、熱心に布教していました。
因みに宗教の「高みへ行く」→「高次元へ行く」→「怪異になる」ということだと考えられます。
【近畿地方のある場所について】埼玉一家はなぜ大量にお札を書いていた?考察
一家全員で何百枚もお札を描いていたのは、自分たちが助かるためでした。
最後の作者(背筋さん)の状況と似通っていることから、彼らも同じ状況だったということが推測できます。
恐らく宗教の信者で、怪異と深く縁を結びすぎてしまっていたのでしょう。
「一家で神隠し」「行方不明」と報道されたとありますが、彼らは恐らくもう……。
【近畿地方のある場所について】呪いの動画“謎の5秒間”の正体は?考察
曰く付きの動画は、映画や動画の切り抜きの寄せ集めで編集されていましたが、「5秒くらい素人が撮ったシーン」が組み込んでいることが話題となっていましたね。
それは、あきら(了)が死に際に見ていた映像です。
以下、解説していきます。
で、次が女性のアップ。笑ってるようにも泣いてるようにも怒ってるようにも見えました。口を大きく開いて歯なんかむき出しで。その顔が画面に近づいたり遠ざかったりするんです。女性の顔のインパクトが大きいのと、映るのが本当に数秒なのでじっくり見ないとわからないんですが、多分その女性、カメラに向かってジャンプしてるんですよね。えっと、下からこちらを見上げて飛び跳ねている女性を、真上から撮影しているような恰好です。顔より少し上に両手が見えてたんでカメラに手を伸ばしているようにも見えました。
小説『近畿地方のある場所について』│背筋
この動画の最初に映る「幽霊マンション」は、当時あきらくんが住んでいたマンションです。
つまり、枝にぶらさがって自分のマンションを見つめたあとに、あきら(了)を下ろそうとして、必死にジャンプしていた母親の姿を見下ろしたのです。
これらのことから、“あきらは母親が気づいたときにまだ生きていた”ということが分かります。むごいですね。
【近畿地方のある場所について】あきらはなぜ死んだの?考察
あきらは、まっしろさんのゲームの身代わりとして殺されてしまった可能性が高いです。
理由は、以下になります。
- あきらの死について、“高い位置で、遺書もなく登れる高さの台もなかった”と説明があった。
→他殺 - 赤いコートの女が「あきらのが友達」を欲しがる。
→生前、虐めにあっていた - まっしろさんゲームの身代わりとして、猫が殺されて捧げものにされたことがある。
→まっしろさんゲームは次第にエスカレートしていた - 作者(背筋さん)が、赤いコートの女のことを“自分の子どもの命を奪った、偽りの神に縋った哀れな女”と述べている。
などです。
これらのことから、まっしろさんゲームの身代わりにされたということが考察できます。
一年後に飛び降り自殺した少女は、あきらを身代わりにした少女だと結びつけることもできます。
【近畿地方のある場所について】どういう意味?考察
「リアルまっしろさんゲーム」状態です。
以下、解説していきます。
【まっしろさんのルール】
- 鬼は「まっしろさん役の男の子」
- 標的の場所を教える協力者は「まっしろさん役意外の男の子」
- 標的は「女の子」
- 捧げるものは「まっしろさんが要求したもの」
【現在、起こっていること】
- 鬼は「男の子の形をした怪異」
- 標的の場所を教える協力者は「赤いコートの女」
- 標的は「みんな」
- 捧げるものは「命」
Cさんの場合(女)
Bを身代わりにした可能性が高いです。
A(男),B(男),C(女)の学生三人グループで、肝試しにいったときの話です。
Cが「見つかっちゃった。どうしよう」と話しています。
CはAが「その何か」について話そうとすると制止させ、Bにはむしろ「何を見たのか」促します。
後に「Cから告白して付き合うことになった」とAは述べていますが、
Cはこの頃から元々Aが好きだったのだと思います。
なのでAを守り、Bを身代わりにしたのでしょう。Cには霊感がありました。
「言いたくありません。言って気づかれるのもいやじゃないですか。Cにはまた、別の何かが見えてたのかもしれませんが、それについてはお互い何も話さないようにしてます。この話はあくまで、俺の友達が変なものを見て、変になった話です。俺たちはそこに居合わせただけってことにしてるんです」
小説『近畿地方のある場所』│背筋
「見つかる」というのは「見ている」と認識しないことが大事です。
反応してはならないのです。
「恐怖を伝える動作の実験」のときにも、霊感を持つ学生たちがそう話していました。これは現実世界でもいえることですね。
Bはその後おかしくなり、スピリチュアル系のサークル活動に精を出し始めたといいます。
きっと“何か”から必死に逃げていたのでしょう。
Fさんの場合(男)
男の子に捕まっている状態だと考えられます。
赤いコートの女に見つかり、男の子の怪異の標的となっているのがFです。
(※呪いを解くために神社にお払いにいった人物)
お坊さんは恐らく真意に気がついていたけれど、「人を身代わりにしなさい」とは言えないため「ペットを飼いなさい」と言ったのだと思います。
ペットの命では不十分なのか、それとも既に深く結びついてしまったからなのか、Fさんはずっと身代わりを用意し続けています。
ペットがメダカ→オウム→猫、犬…とだんだん命(寿命)が大きくなっているところにも注目です。
Fは気づいたのかもしれません。
【近畿地方のある場所について】考察・ネタバレ解説まとめ
今回は、小説『近畿地方のある場所について』について考察してみました。
この作品がデビュー作とは、末恐ろしい作家さんですね。
考察の結果、
- 最後の意味は?…作者(背筋)はお札よりも強力な呪いをかけるために本書を執筆し、読者を身代わりにした。
- 謎の男の子の正体は?…赤いコートの女が生み出した怪異。
- まさるの話は真実?神社の謎は?…神社は鬼を鎮めるために造られたもので、まさるは贄として殺されてしまった。
- シール(お札)の意味は?…呪いを広める・男の子の怪異を育てるためのもの。
- 埼玉一家はなぜ大量にお札を書いていた?…作者(背筋)と同じように、自分たちが助かるために呪いを広めようとしていた。
- 呪いの動画“5秒間”の正体は?…あきら(了)が死に際にみた光景。
- あきら(了)はなぜ死んだの?…「まっしろさんゲーム」の身代わりされたから。
- どういう意味?…「リアルまっしろさんゲーム」のような現象が起きてしまっている。
となりました。ご参考になりましたら幸いです。
最後まで読まれてしまったのですね。
拙い考察で本当にごめんなさい。
この記事を見つけてくださりありがとうございました。<了>