話題作『ルックバック』についてです。
本記事では、世間が関心を寄せている3つの疑問点、
- 『ルックバック』と京アニ事件(京都アニメーション放火殺人事件)、どっちが先?実話?
- 犯人のセリフとは?・改稿の経緯
- 作者・藤本タツキ氏の原体験と作品から読み取れるメッセージ
について、実際の事件「京アニ事件」に触れ、詳しく解説しています。
本記事は、作品の背景や設定に関するネタバレ要素が含まれますのでご注意ください。
【ルックバック】京アニ事件はどっちが先?
どっちが先かというと、京アニが先です。
- 京アニ放火の件:2019年7月18日。
- 映画『ルックバック』の原作である同名漫画の掲載:2021年7月19日(集英社ジャンプコミックス)。
『ルックバック』実話?京アニとの共通点
『ルックバック』は実話ではありません。
しかし、本作のクライマックスにある衝撃的なシーンが、とある事件が強く想起され、議論されている作品です。
それが、『京アニ事件(京都アニメーション放火殺人事件)』。
「アイディアを盗まれた!」と一般人男性が創作関連の建物に押しかけてきて、罪のない一般人の命が奪われる経緯が酷似しているのです。
※京アニ事件について、犯人(青葉真司氏)が投稿した小説は応募規定を満たしていませんでした。そのため受け付けされておらず、パクった事実はないと報道されています。
【双方の違い】
- 『ルックバック』
- 犯人が「パクられた」と訴えるのは「ネット上の絵」。
- 被害者は美大生。
- 刃物による被害。
- 『京アニ事件』
- 犯人が「パクられた」と訴えるのは「『第7回京都アニメーション賞』に応募した小説の内容」。
- 被害者はアニメ制作会社「京アニ(京都アニメーション)」の社員。
- 放火による被害。
公式による発表はありません。
しかし『ルックバック』より京アニ事件が先である事実から、無意識下で影響を受けた可能性は否定できません。
セリフの修正と改稿の経緯:「作者の配慮と意思」
『ルックバック』は公開直後、その圧倒的なクオリティで称賛を浴びる一方で、例のシーンの描写について大きな議論が巻き起こりました。
以下、実際の「セリフ」と共に確認していきましょう。
初期版のセリフと指摘された懸念
「オイ ほらア!! ちげーよ!! 俺のだろ!? 元々オレのをパクったんだっただろ!? ほらな!! お前じゃん やっぱなあ!?」(男性)
引用元:漫画『ルックバック』│藤本タツキ
初期版(2021年7月19日公開時)では、犯人が犯行時に叫ぶセリフや動機として、特定の属性(精神障害)を想起させ、結果として「偏見や差別を助長しかねない」という指摘が読者から寄せられました。
そうした懸念の声に対し、作者の藤本タツキ氏と少年ジャンプ+編集部は、公開からわずか2週間足らずで迅速な対応をとることになります。
改稿の事実
『ルックバック』作品内に不適切な表現があるとの指摘を読者の方からいただきました。⁰熟慮の結果、作中の描写が偏見や差別の助長につながることは避けたいと考え、一部修正しました。
— 少年ジャンプ+ (@shonenjump_plus) August 2, 2021
少年ジャンプ+編集部https://t.co/Vag51clfJc
2021年8月2日、編集部は「熟慮の結果、作中の描写が偏見や差別の助長につながることは避けたいと考え、一部修正しました」と公式発表を行いました。
実際のセリフは以下です。
「オイ 見下しっ 見下しやがって! 絵描いて 馬鹿じゃねえのかああ!? 社会の役に立てねえクセしてさああ!?」(男性)
引用元:漫画『ルックバック』│藤本タツキ
再修正の事実
特筆すべきは、単行本化にあたって「著者と協議の上、さらに再修正が行われた」という事実です。
編集部は単行本について「著者の意見を受けて協議の上修正した」と説明がありました。
藤本タツキ著『ルックバック』については、発表後、8月2日に内容を一部修正いたしましたが、9月3日発売のコミックスにおいて、著者の意向を受けて協議のうえ、セリフ表現を変更している部分がございます。
— 少年ジャンプ+ (@shonenjump_plus) August 27, 2021
ご理解いただきますよう、お願い申し上げます。
少年ジャンプ+編集部
再修正後のセリフは以下です。
「俺のネットにあげてた絵!パクッてたのがあったろ!?」「なァ!!」「オイ 見下しっ 見下しやがって!俺のアイディアだったのに!パクってんじゃねええええ」(男性)
引用元:漫画『ルックバック』│藤本タツキ
それぞれ、受ける印象が違います。
最初の修正版だと、犯人は創作そのものとの関わりが薄く、単なる通り魔的な印象が強いです。
一方、最終版では犯人の「創作活動にかける命」「表現者としての歪んだプライド」が伝わり、表現者が背負う心の闇が強調されました。
『ルックバック』は、作者の原体験が一部含まれている
オフィシャルインタビューによれば、「映画『ルックバック』は、一部、作者・藤本タツキさんの原体験が含まれている」といいます。
藤本タツキ氏の実体験として、同い年で絵がうまい人がいると焦ったり、同年代でうまい人のリストを作ったり、美術高校の話を聞いて「ずるい!」と感じたりした背景があるのだそうです。
これは、藤野が「学校休んでいる間に絵の練習しているなんて、ずるい!」と嫉妬するシーンを彷彿とさせますね。
また、本作の物語の主人公「藤野・京本」の名字に、作者の藤本タツキ氏の名字が振り分けられていることにもお気づきでしょうか。
主人公ふたりに、作者の想いが乗っていることが伝わります。
本記事では『ルックバック(原作漫画)』についてタイトルや内容がどういう意味なのか・伝えたいことについて考察・解説していま…
『ルックバック』を通じて藤本タツキが伝えたかったこと

「藤野ちゃんは、なんで漫画を描いているの?」
ラスト、その答えが映像で語られていました。
藤野の答えとしては、
「京本の顔が楽しそうにキラキラと輝くから」
「京本がいるから」
という答えが読み取れました。
作者の藤本タツキ氏は漫画家であることから、
「読者の楽しむ顔が見たいから」
「読者がいるから」
と置き換えて解釈することができます。
藤本タツキ氏がヒット作を世に送り出す理由、世の人々が夢にかける情熱や想いの素晴らしさ、壁にぶちあたり挫折しても、藤野のように前を向こうというエールが読み取れるのではないでしょうか。
【独白】『ルックバック』を観終えた筆者の感想―事件を超えて胸に刺さる、藤野と京本の「あの日々」への想い

ふたりのような関係性に憧れました。
夢と青春を共にする存在。輝いていますね。
青い時代ならではだと思います。
なかでも、2人という人数は特別だと思います。
何故なら、それぞれの立ち位置や役割が固定されがちだからです。
背中を見せているのが藤野。
その背後にいるのが京本。
徹底された描写に感動しました。
背をふり返ったときに初めて気づけるのです――後ろをついてきてくれるその人が、誰よりも努力を認めてくれるのだと。だからこそ前を走れるのだなと。
相乗効果で素晴らしい関係性だと思いました。
京本の方が視聴者人気高いのでしょうか?
わたしが鑑賞した映画観のグッズ売り場では、京本のほうだけ「再入荷」になっていました。
因みに、わたしは藤野のほうが好きです。強がりなところが可愛いのと、声が好きでした。
まとめ:【ルックバック】京アニ事件の時系列と改稿の事実
本記事では映画『ルックバック』についてネタバレありで考察・解説しました。
- 京アニ事件とどっちが先?:京アニ事件が先。
- 実話?:実話ではないが、京アニ事件を想起するシーンがある。また、作者の原体験が一部含まれている。
- セリフ改稿の経緯と事実:読者のスティグマ指摘を受け、2度の改稿が行われた。
- 『ルックバック』に込められたメッセージを読み解く:表現者の夢にかける情熱・素晴らしさ・壁に立ちはだかっても前を向こうというエール
ご参考になりましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
