今回は映画『パーフェクトブルー(PERFECT BLUE)(1997年)』についてです。
『パーフェクトブルー(PERFECT BLUE)(1997年)』は、今敏監督によるアニメ映画です。今敏監督の作品は「現実と虚構が交差する」作風が特徴的です。本作は永く愛されている作品です。
原作は、竹内義和さんの小説『パーフェクト・ブルー 完全変態(1991年)』です。
原作と映画では内容は随分違うようで、映画版では様々な考察がなされています。
本記事では、劇中に主人公未麻がラストに放ったセリフ
「私は本物だよ」
について、どういう意味なのか、最後どうなったのか、色々考察しています。
ご興味のある方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
本記事にはネタバレが含まれます。
映画『パーフェクトブルー(PERFECT BLUE)(1997年)』をご覧になってない方はご注意くださいませ。
【パーフェクトブルー】ストーリー
主人公は女性アイドルグループ「CHAM」のセンター「霧越未麻」。本心とは裏腹に、事務所の意向で女優の道へ進むことになる。
初ドラマ「ダブルバインド」の仕事は、アイドル時代の清純なイメージとは真逆のセクシーな仕事だった。
その折、未麻をとりまく連続殺人事件が発生する。
“殺人犯は誰なのか?、もうひとりの自分の正体は?”
次第に現実と虚構の板挟みになり、真偽の区別がつかなくなっていく。
ドラマのタイトル「ダブルバインド」の意味
未麻の初出演ドラマ「ダブルバインド」の意味は「板挟み」という意味だそうです。
ドラマ内で、未麻は「自身(陽子/殺人犯)」と「陽子の姉」を行き来し、区別がつかなくなる役です。
“板挟み”の状況は未麻の現実とリンクしているといえます。
何故なら、現実の世界でも、未麻は“現実”と“ドラマの出来事(虚構)”の境目が曖昧になっていってしまうからです。
未麻は、「本当に女優の道に進んで良かったのか」葛藤し苦悩します。
その執念ときたら、アイドル時代の未麻の幻影が現われ、未麻に語り掛けてくるほどでした。
【パーフェクトブルー】「私は本物だよ」の意味について考察
※ネタバレを含みますのでご注意ください※
パーフェクトブルーにはカットされていたシーンがある!
調べてみたところ、映画『パーフェクトブルー』にはカットされていたシーンがあるそうです。
※岩男潤子(いわおじゅんこ)…未麻役の声優。
未麻の映画祭新人賞受賞を祝うパーティ会場。
引用元:KON’S TONE http://konstone.s-kon.net/modules/pb/index.php?content_id=21
その主役の筈の未麻が現れずマネージャーの矢田(レイと雪子二人のチャムについていたメガネの男)が主催者に怒られ、途方に暮れて空を見上げて嘆く。
「どこ行ったんだよォ 未麻ァッ!!」
時間的な制約により欠番にしたシーンであるが、「映画祭新人賞受賞」としているあたりあの事件からそう時間は経っていない感じにしたかったのだと思う。長くても一年くらいの時間経過だろうか。
引用元:KON’S TONE http://konstone.s-kon.net/modules/pb/index.php?content_id=21
しかしこのシーンが無くなったことで、本編のラストシーンは時間経過がどのくらいあるのか見当がつきかねるようになっている。「欠番」の存在を知っている私にとっては、随分と大人びた岩男さんの未麻は意外に思えたのだ。
4〜5年は経過している感じだろうか。私もすぐに頭を切り換える。「大人の未麻」であることに何ら問題はないはずだ。しかも。より、良い。
説明されない時間経過はむしろ想像をかき立てる。実に好ましい。
しかも看護婦ロ(もう一人はイである)のセリフ「ウソォ? 来るわけないでしょ、霧越未麻が」というセリフはあるが、「映画祭新人賞受賞」を切ったせいでどういう種類の有名人かも分からなくなっている。尚のこと良いではないか、不親切で。
岩男さんの解釈と欠番の意図しない効果のおかげで良いエピローグとなったと思う。
事実、こちらのシーンが抜け落ちたことで、様々な憶測を呼んでいます。
結果的に“謎に包まれるラスト”ということに落ちついたともいえますが、真実をひとつに絞るとしたら、未麻は女優として有名人になっていたといえます。
何故なら、未麻は「映画祭新人賞受賞」の打ち上げをサボり、マネージャーのルミがいる病院へ出かけていたからです。
となると、「新人賞」とする割には月日が経過しすぎているかもしれませんね。
なにか別の賞(主演女優賞など)ということになりそうです。
「私は本物だよ」は「あなたは誰?」という問いへの答え
つまるところ、
「私は本物だよ」というセリフは「あなたは誰?」という問いへの答え
だと考察できます。
「私は本物だよ(私は私)」
「あなたは誰?」という言葉は、未麻の初出演ドラマ『ダブルバインド』での最初のセリフです。
未麻は、このたった一言のセリフを何度も繰り返し練習していました。
また、連続殺人犯やもうひとりの自分に怯える背景からも、印象的なセリフとなっています。
ラストにバックミラー越しに「私は本物だよ」と言うシーンは、「アイドル時代の精神」と一体化した印象を与えます。何故なら、未麻の幻影は、鏡越しや窓越しに語りかけてくることが多かったからです。
未麻が“アイドルから女優に転身した過去”を認めたことで、ようやく意識が統一されたのかもしれません。
アイドルだろうが、女優だろうが、誰がなんといおうと、「私は本物だよ(私は私)」それが未麻の出した答えなのではないでしょうか。
「私は本物だよ(女優として)」
ラストにバックミラーに映った未麻の笑顔は、どこか怪しいです。何故でしょうか?
劇中では、次々と未麻の関係者が殺されていきました。ドラマ監督、ヌード写真集のカメラマン、事務所の田所さん、熱狂的ファンの4名です。このうちの1人だけ未麻が殺したと筆者は考えています。
その被害者とは「ヌード写真集のカメラマン」です。
理由は以下になります。
- その殺人シーンだけ未麻の顔が映っていた
- 未麻が部屋のクローゼットから、血のついた洋服を見つける描写があった
もし仮に殺していたとしたら、「私は本物だよ」というセリフには「私は本物の女優だよ」という意味も込められているといえるでしょう。
何故なら、殺人前科歴のある女優が「TVに出たり、栄誉ある賞を受賞したり」することは難しいからです。
【パーフェクトブルー】「私は本物だよ」の意味について考察まとめ
今回は、映画「パーフェクトブルー(PERFECT BLUE)」の“私は本物だよ”というセリフの意味について考察してみました。
- 未麻は未麻(アイドルの未麻の幻影に惑わされなくなった)。
- 未麻は女優として本物(俳優として栄誉ある賞を受賞した)。
という結果になりました。
たくさん苦しい思いをした未麻が、幸せになれていたら良いですね。
ご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。