今回は、映画『プラットフォーム』についての考察です。
監督はスペインのガルダー・ガステル=ウルティアさんで、本作が長編初監督作品とのこと。数々の賞を受賞しています。
プラットフォームの独特な世界観は唯一無二です。
もしこんな施設に送り込まれたら嫌ですよね。視聴後も暫く頭の中から離れない……という方も多いのではないでしょうか。
謎がとても多いです。
筆者は、意味不明で繰り返し観てしまいました。
「プラットフォームのミハルについての考察は?」
「プラットフォームの穴の意味や目的は?」
「意味不明!いったい何が言いたいの?」
視聴者からすると、スッキリさせたいところですよね。
ということで、本記事では映画『プラットフォーム』について考察しています。
もしご興味のある方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
【プラットフォーム】ストーリー
ある日、ゴレンは目が覚めると「48」階層にいた。部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が”プラットフォーム”と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかないのだ。同じ階層にいた、この建物のベテランの老人・トリマカシからここでのルールを聞かされる…1ヶ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは「171」階層で、ベッドに縛り付けられて身動きが取れなくなっていた!果たして、彼は生きてここから出られるのか!?
映画『プラットフォーム』公式サイト
【プラットフォーム】主な登場人物
■ゴレン(イバン・マサゲ)…主人公。
■トリマガシ( ソリオン・エギレオル)…主人公と同部屋にいた老人。
■イモギリ(アントニア・サン・フアン)…主人公と同部屋にいた女性。穴の管理局で働いていた。
■バハラト( エミリオ・ブアレ)…主人公と同部屋にいた男性。
■ミハル(アレクサンドラ・マサンカイ)…息子を探している女性。
■謎の子供…300階層にいた子ども。
個人的には老人トリマガシの演技に引き込まれました。
【プラットフォーム】意味不明1:ミハルについて考察!
ミハルは元女優です。マリリン・モンローに憧れていたそうです。
管理局に勤めていた女性イモギリによると、穴に入る前は独り身だったとのこと。
ミハルの子供(息子)について考察!
ミハルの子供(息子)は施設内で産んだ子ということになります。
何故なら、“穴には16歳以下は入れない”というルールがあり、厳重に管理されているからです。
ミハルが同室者を殺すのは何故か考察!
ミハルが同室者の男性に襲われたからだと思います。
その際に身ごもったのが「息子=子供」なのです。
ミハルは最下層に行った後も生き続けなければなりません。ある程度食べて蓄えてから降りていく必要がありました。元女優の美しいミハルが安心して眠りにつくには、殺害する必要があったのです。
劇中では、ミハルがプラットフォームに乗って落下していく際に、男たちに襲われそうになる描写もありました。
「子供の食糧を減らさないように」という理由も考えられますが、それなら一階ずつ降りるたびに殺していくはずです。
ミハルが、管理局の女性を生かし犬を殺したシーンについても辻褄が合いません。犬よりも人間のほうが食べるからです。ミハルは穴に送り込んだ管理者に、大切な子(ペット)を失う悲しみを味あわせたのでしょう。
ミハルは何故主人公ゴレンを助けたのか考察!
“子供(息子)が見つかったときの父親になってほしい”、という願いがあったのではないでしょうか。
下劣な男性が多い穴のなかで、唯一ミハルに優しく接してくれたのが主人公ゴレンだったのかなと思います。
ミハルは何故子供に会えなかったのか考察!
子供(息子)がベッドの下から出てこなかったのは、ミハルのことを母だと認識できなかったからです。
あれほど成長するまで離れ離れでいたということは、母の顔を覚えていないと思います。
ミハルはプラットフォームに乗って落下していく前には、必ず同室者を殺害していまいた。わざわざ、返り血にまみれた大人に近づいていくことはしないはずです。
唯一会える方法、それは“食べ物と一緒に最下層まで降りていく”ことだったのでしょう。
【プラットフォーム】意味不明2:穴について考察!
穴の正式名称は『垂直自主管理センター(vsc)』です。
穴のルールは?
まずは「明らか」になっているルールを挙げてみます。
- 16歳以下は入れない
- 自らの意思で来たもの、そうでないものがいる
- 穴に入る際に、何かひとつだけ持っていっていい
- 0層にいるシェフたちが、プラットフォームに食事を盛りつける
- 信号が赤から緑になると、プラットフォームが降りてくる
- 食べ物を隠し持ったら罰が与えられる(返さないと死亡)
- 一か月ごとに、部屋の階層が変わる
- 穴を出る際に、認定証がもらえる(期間は人による)
最先端の技術が盛り込まれた施設だと思います。
高所恐怖症の人にはキツい環境だと思います。
何階まであった?
「最下層は333層」とされています。
因みに穴の管理局で働いていたイモギリは、200階と聞かされていました。
主人公ゴレンは“プラットフォームの移動時間”で計算したところ、おおよそ250階と検討をつけました。(※実際には、人が不在の階には台座が停まらないため、誤差が生じました)
何度も予想以上の階層を見せつけてくることで、視聴者にうまく衝撃を与えています。
イモギリが202階で自害したのは、自責の念に押しつぶされたからでしょう。知らなかったとはいえ、8年間も人を穴に送り続けたのです。
監視カメラはあったのか考察!
監視カメラは設置されていない(もしくはチェックしていない)と考えられます。
何故なら「200階より下の階層があること・最下層まで食糧が足りていない」ということを管理者らが気づいていないからです。
管理者たちは、穴の住人たちの部屋替えをしにくるときに、やっと死体を見つけるのです。管理者たちは、穴の住人が“食糧が足りずに殺し合った”とは考えません。
同室者を殺害したら、罰として穴から出るのが遅くなるのではないでしょうか。
ミハルが長いこと出られないでいたのも、そのためなのです。
穴の目的について考察!認定証とは?
更正施設のようなものだと思います。
老人がここに来る前に「精神科病院」か「穴」かの2択を迫られています。このことから「精神病院」とおおよそ同じような効果を得られる場所と考えられます。
管理局に勤めていた女性イモギリも、「穴にいれば、自然と連帯感が生まれる」と穴の目的を明らかにしています。
敢えて無秩序の空間を用意している様は、まるで実験施設のようでもあります。
認定証については意味不明ですが、おおよそ“良い人間の証”といったところでしょうか。
犯罪者でなくても志願すれば入れるということから、なんらかの面で“入所前より待遇が良くなる”ことが予想できます。条件の良い仕事に就きやすくなるのかもしれません。
【プラットフォーム】意味不明3:最後について考察!
伝言(メッセージ)について考察!
“16歳以下の子供が穴にいる”ことで抗議するのだと思います。『垂直自主管理センター(vsc)』が破綻していると。
大人の場合は精神障害とみなされて終わりでしょうが、子供の話にはちゃんと耳を傾けるでしょう。
最後、なぜ子供を1人で行かせたのか考察!
最下層に着いた頃には、ゴレンは死亡していたのだと思います。
子供の隣に本当はゴレンの遺体があって、でも魂はそこにはないので、ああいう映り方になったのではないでしょうか。
ゴレンは老人と共に、子供を乗せたプラットフォームが上がっていく様子を見守っていました。
その時の老人の眼差しが優しくて切なくなりました。穴に入る前はゴレンと同じように優しい人物だったのではないか……という気がしたのです。
因みに「連帯感は自然と生まれるものではない」とされていましたが、「連帯感」は本当になにひとつ生まれていなかったのでしょうか?
子供はゲッソリともしておらず、生きていました。
その背景に、子供に食べ物を与えた大人たちがいたのではないでしょうか。
ミハルが殺した男性は、もしかしたら子供(息子)に食べ物を分け与えた誰かだったのかもしれません。
【プラットフォーム】意味不明4:結局この映画は何が言いたいのか考察!
とくに、富みを持っている人たちへのメッセージなのかなと思いました。
社会の縮図
公式の予告では「社会の縮図」という言葉が使われています。
はじめは誰かの食べ残しなんて食べる気にはならなかったゴレン。しかし日を追うにつれ、お腹が空いてしまうため食べるようになります。
大勢の命を守るために、目の前の人を簡単に殺すようになってしまいます。
……現在の社会に置き換えるとどうでしょうか?
現代の日本に生きている人々は、大抵「誰かの食べ残しはどうぞ」と言われても受け取る気にはならないでしょう。しかし戦争が起こり、着の身着のままになったとき、ゴミ箱の残飯を漁ることになるでしょう。
人間が生きていくために人肉を食糧とするのも、極限状態に陥った人間がとる正常(?)な行為です。遭難した人間が共食いした事例は実際に幾つかあります。
輪廻転生
以下は、映画『プラットフォーム』冒頭あたりの老人のセリフです。
楽に食えるときも、難しいときもある
出典元:映画『プラットフォーム』
幸運にも第48層は良い階層だ
目覚めたら違う階層にいるという穴のシステムは、まるで輪廻転生のようです。
どの階層に生まれるかは目覚めるまで分かりません。運次第なのです。
正確には記憶していないのですが、「富のある人が富んだ人でいるためには、富を良い方法で使うしかない」「お金を持っていても、犯罪を犯したら罪人だ」という老人のようなセリフがあったと思います。
自然に連帯感は生まれないのですから、この世界を変えるには、良い階層にいる者が意思を持って行動しなければなりません。
しかし、平等の時代はいつまでもやってきません。『垂直自主管理センター(vsc)』同様に。貧しいと犯罪が起きます。そしていつの時代も子供が希望です。
そんな風刺作品なのではないでしょうか。
【プラットフォーム】映画考察についてまとめ
今回は映画『プラットフォーム』について考察してみました。
ミハルや子供、穴や最後について考察していきました。怖いしグロいシーンもあるのに関わらず、不思議と見入ってしまう作品でした。
こういった映画は、様々な捉え方や考察ができて面白いですよね。
意味不明だった謎が“明らか”になりましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。