ジブリ映画『レッドタートル ある島の物語』を観て、「正直、意味がわからなかった」「一体どんな話なの?」と戸惑いを感じた方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、本作にはセリフが一切ないのが特徴です。
- 赤い亀の正体
- 筏を壊した犯人
- 本作の結末
今回は、単行本に記された公式な設定も交えながら、主に上記の3点について徹底ネタバレ考察・解説していきます。
『レッドタートル ある島の物語』作品情報とあらすじ
作品情報
| 作品名 | 『レッドタートル ある島の物語』 |
|---|---|
| 原作/原作者 | 『The Red Turtle』/マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット |
| 公開日 | フランス:2016年6月29日 日本:2016年9月17日 アメリカ:2017年1月20日 |
| 制作国 | フランス、日本、アメリカ (※フランス中心) |
| 上映時間 | 80分(1時間30分) |
| 監督 | マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット |
あらすじ・ストーリー
無人島に漂流した青年は、島からの脱出を試みるも「見えない何か」によって幾度も筏(いかだ)を壊されてしまいます。
絶望のなか、彼は目の前に現れたのは一匹の「赤い亀」に八つ当たりし、任せて死なせてしまいます。その死骸はやがて美しい女性へと姿を変えました。
ふたりは島で愛し合い、息子を授かり、穏やかな時を重ねます。
【解説】レッドタートルの正体と「なぜ人間になったのか」

以下、本作の公式の単行本の情報をベースに解説します。
レッドタートルが陸に上がった理由
彼女が浜辺へ上がってきたのは、主人公の青年を愛していたからです。
ではなぜ、愛したのかといえば、“青年が砂浜で助けた子亀がレッドタートルだった”というケースや、“その様子を端から眺めていて青年に恋をした”というケースが挙げられます。
なぜレッドタートルは人間になれたのか?
亀が人間になれた理由は、「海では、そういう不思議なことが起こるから」と説明されています。
したがって、おとぎ話の「人魚姫」「鶴の恩返し」のように、一口で説明できない愛の力が奇跡を起こしたといえるでしょう。
【徹底考察】筏(いかだ)を壊したのは誰だったのか?

物語序盤、“筏を壊して青年の脱出を阻んだ犯人”は誰だったのでしょうか。
劇中では明言されていませんが、「筏を壊したのはレッドタートルではない」と考えられます。
理由3点を以下に解説します。
- 直接的な攻撃描写がない: レッドタートルが筏を壊す描写はなく、あくまで「何者か」のしわざとされている。
- 亀は青年を愛している: もしレッドタートルが無理やり青年を無人島に閉じ込めたのだとしたら、それは愛ではなく「恋」や「執着」であり、物語のトーンがホラーになってしまう。
単行本の「海では不思議なことが起こる」という言葉通り、運命の出会いへと導いたのは「海そのものの意志」だったのかもしれません。
亀は、本来ひとり寂しく無人島で孤独死するところだった主人公に、愛や家族を与えてくれた存在といえます。
【考察】『レッドタートル ある島の物語』の結末がもたらすメッセージとは
本作のあまりに静かな結末には、どのような意味が込められているのでしょうか。
物語の結末
物語の最後、老いた主人公は静かに息を引き取ります。
それを見届けたレッドタートルは再び亀の姿へと戻って海へ帰っていきます。
作品に込められた意味
本作を通し、「ひとつの人生の完結」と「生命の循環」が描かれています。
「人間の一生」という短い時間を、永遠に近い時を生きる「自然(海・亀)」がそっと寄り添い、共に歩んでくれた――。そして次世代を担う息子の旅立ち。
これらの生命の対比を描き、残酷なまでに美しい生命のサイクルを肯定するに相応しいラストシーンだったといえるでしょう。
「レッドタートルはジブリじゃない」説の真相
「これって本当にジブリ作品なの?」という疑問をよく耳にします。
結論から言えば、本作はスタジオジブリ作品です。 公式サイトの作品一覧にも掲載されており、巨匠・高畑勲監督が「アーティスティック・プロデューサー」として深く関わっています。
因みに、本作は初の海外のスタジオとのコラボで、監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット氏。そのためほかのジブリ作品とは毛色が異なるのです。
本作がジブリじゃないといわれる理由
- 表現の違い:海外のクリエイターが中心となった日仏米合作のため、作品のスタイルや絵柄のテイストが、従来のジブリ作品とは趣が異なる。
- 配信状況: Netflixのサブスク(海外版ジブリ枠)で配信されていないことも、誤解を生む一因となった可能性。
過去作とは趣が異なりますが、直接的な言葉を使わずとも「生命の循環」を描く姿勢は、まさにジブリの精神が宿った一作だと言えます。
まとめ:映画『デッドタートル』は言葉を超えた愛の物語
映画『レッドタートル ある島の物語』は、一言で表すなら「孤独な男に愛を与えた、亀の恩返し」の物語です。
- 亀が来た理由: 青年を愛したから
- 人間になった理由: 海の不思議な力が働いたから
- 結末の意味: ひとりの男の人生を全うさせ、彼女は再び海へと帰っていった
セリフがないからこそ、観る側の数だけ解釈が生まれる本作。
一度観て「?」となった方も、この記事の考察を読んだ後にもう一度見返すと、また違った感動に出会えるはずです。