映画『箱男』を視聴後に非常に多いのが「意味不明!」の声です。
本記事では、
- ラスト・結末の意味は?
- 葉子の正体とは?
- 箱男はなんの武器で戦っていたの?
- 伏線
について、映画、原作小説、公式情報をもとに徹底考察します。
この記事を読めば、映画鑑賞後の違和感が解消され、本作に隠された「恐ろしい仕掛け」に気づくはずです。
※本記事は物語の核心に触れるネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
映画『箱男』主な登場人物(キャスト)
- わたし(永瀬正敏):元カメラマンの箱男
- 偽医者(浅野忠信):免許を持たない贋医者
- 葉子(白本彩奈):元ヌードモデルの贋看護師
- 軍医殿(佐藤浩市):奇病に侵されている医者
誰が箱男で、誰が箱男になり損ねたのか?
“匿名性”をとことん突き詰めた前代未聞の物語。
【箱男】ラストシーン・結末の意味は?【徹底考察】
ラスト、観客席に向けて放たれたセリフ「箱男は君たちだ」。
その衝撃の真相は以下です。
- 映画観(シアター)=ひとつの大きな箱
- スクリーン=のぞき窓
ラストシーンで大勢の箱男たちが登場しますが、あれは映画観の観客たちの視線の象徴だと解釈することができます。
一方的に映画の世界を覗いて、あれこれハプニングが起っている様子を大人しくじっくり噛みしめている観客たち…。
筆者は、静まった映画観のなか、いけないことをしているみたいですこし気まずいというか、少し恥ずかしくなりました(笑)。それでも覗きたい、箱男心です。
意味不明!どういう意味?
完全犯罪を狙う贋医者が、箱男(匿名性)のポジションを狙っていた…という意味だと考えられます。
おおまかには以下のステップです。
- 医者に自殺願望がある:偽医者は医者に脅迫されているため、命令に逆らえない。「自殺のお手伝い」をしなければならない。医者の内縁の葉子も逆らえない。
- 偽医者は、完全犯罪を狙う:完全犯罪のためには、箱男になる必要がある。箱男になるためには、段ボール箱とノート(過去の記録)が必要。
- 偽医者が箱男に、箱男は偽箱男になる:箱男は、偽医者との戦いに敗れた。
こうして男(わたし)は、覗かれる立場となったのです。
偽医者は完全犯罪を企てていました。そのため、軍医殿が用意していた遺書を破り捨てて、贋物の遺書をノートにしたためたのです。
右手の装置は、軍医殿の筆跡に似させる装置なのかもしれません。
偽医者は無免許でしたが、軍医殿よりはるかに才能がありました。
【箱男】伏線まとめ
1:「箱男を強く意識するものは、箱男になる」
幾度となく出てきたこのセリフは、重要な伏線となっています。
作中の登場人物「わたし・偽医者」は、元々箱男を攻撃する立場でしたが、最終的に箱男になりました。
そしてラストに、観客たちも箱男になるという結末で、大胆に回収されています。
2:「どうせ、妄想なんだから」
このセリフは、男たちがまだ起きてもいない出来事をノートに綴っていること、そして「映画=フィクション(作者や監督の妄想)」だからです。
まるで、“物語の真相”に気づいたときの感情まで、劇中の箱男とリンクするかのようですね。
※セリフは公式の台本ではなく、当日のメモと記憶に基づいています。正確なセリフを確認したい方は本編を併せてご覧ください。
葉子の正体は?【徹底考察】
葉子は想像上の登場人物だった可能性が高いです。
贋医者の遺書を発見したとき、もしくは親切な女性からお金を恵んでもらったときに生まれた架空の人物なのでしょう。
最後、ボロボロの恰好のわたし(箱男)がひたすらノートに描きなぐっているシーンがあります。
おそらく、その瞬間が妄想のクライマックスだったはずです。その文章(ストーリー)のなかに葉子は生きていたと考えられます。
箱男が手にしていた黒い武器はなに?【解説】
わたし(箱男)が手にしていた黒い武器は、「お手製のブラックジャック」です。
劇中、箱男が布袋に砂を入れて、お手製の武器を作っているシーンがあったことに気づきましたか?
「ブラックジャック」とは、一見すると凶器には見えませんが、実際には高い殺傷力を持つ武器です。外傷は少ないものの、内側に大きなダメージを与えるという特徴があります。
映画『箱男』筆者のネタバレ感想
芸術的です。観客を飽きさせないための様々な工夫・テクニックが張り巡らされていると、素人ながらに感じました。
完全な孤立を望むといいながら、外の世界(女性)に惹かれる矛盾が人間臭くて惹かれます。箱男にとっての光は女性なのですね(裸ならなお良いのでしょう)。
匿名性を極めたとて、どうやら人間の性からは逃れられない様子。葉子役の白本彩奈さんが美しいので、共感しやすかったです。
ちなみに原作小説を踏まえると、“のぞき穴(窓)についているカーテンがない”、という点が最も印象的でした。
実は原作小説の箱男の窓にはビニール製のカーテンがあり、箱を傾けることでカーテンの角度がずれて、そのときだけ外を覗くことができる仕組みになっているのです。
これがド迫力らしいのですよね。
映画の原作者・安倍公房さんもその「迫力」にやられてしまった一人。
映像作品の場合は、“常に目の表情も楽しみたい”“2人の箱男が出現した際に「匿名性」が究極になりすぎて混乱してしまう”という事情に配慮したのかなと予想します。個人的にこの変更点は有難かったです。
星5点満点です。
映画『箱男』作品情報
| 作品名 | 『箱男』 |
|---|---|
| 公開日 | 2024年8月23日 |
| 制作国 | 日本 |
| 上映時間 | 120分(2時間) |
| 監督 | 石井岳龍(『almost people』『「自分革命映画闘争』) |
| 原作 | 安倍公房 |
| 脚本 | いながききよたか |
| 制作スタッフ | 小西啓介、関友彦、浦田秀穂、 常谷良男、古谷正志、林田裕至、 長瀬万里、井上浩正、山田彩友美、 勝本道哲 |
| キャスト | 永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、 佐藤浩市、渋川清彦、栁俊太郎、 中村優子、川瀬陽太 ほか |
まとめ:【箱男】について考察・伏線・感想まとめ
今回は映画『箱男』について考察・伏線・感想についてまとめてみました。
- ラストシーン・結末の意味は?:劇場を箱に見立て、スクリーンをのぞき穴に見立てて、観客も箱男だったというオチでした。
- 意味不明だけど、どういう意味?:完全犯罪を狙う贋医者が、箱男(匿名性)のポジションを狙っていました。
- 葉子の正体は?:空想上の人物である可能性が高いと考えます。
- 箱男が手にしていた武器は?:お手製のブラックジャックです。
もし、リアルで箱男と遭遇したら、ちょっとした映画スターと出会った気分になるかもしれません。
これもまた、匿名性の魔力といえるでしょう。そしてこれを読んでいるあなたも、ある意味では箱男なのです。
