新海誠監督の作品は、色々考えさせられるという点がひとつの魅力です。
映画『雲のむこう、約束の場所(2004)』においても謎が残りました。
なかでも、
「バッドエンドか？」
「その後は？」
とラストに関して注目が集まっています。
ということで考察していきたいと思います。
- 『雲のむこう、約束の場所(2004)』作品情報
- 考察(ラスト・その後・バッエンド)
本記事はネタバレを含みます。
映画『雲のむこう約束の場所』について
作品情報
| 作品名 | 『雲のむこう、約束の場所』 |
|---|---|
| 公開日 | 2004/11/20 |
| 制作国 | 日本 |
| 上映時間 | 91分(1時間31分) |
| 監督 | 新海誠 |
| 制作スタッフ | 新海誠、伊藤耕一郎、川口典孝、天門ほか |
| キャスト | 吉岡秀隆、萩原聖人、南里侑香、石塚運昇、井上和彦、水野理紗ほか |
あらすじ・ストーリー紹介
日本が南北に分断された、もう一つの戦後の世界。米軍統治下の青森の少年・藤沢ヒロキと白川タクヤは、同級生の沢渡サユリに憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と、そしてもうひとつ。津軽海峡を走る国境線の向こう側、ユニオン占領下の北海道に建設された、謎の巨大な「塔」。いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、小型飛行機を組み立てる二人。
だが中学三年の夏、サユリは突然、東京に転校してしまう…。言いようのない虚脱感の中で、うやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、ヒロキは東京の高校へ、タクヤは青森の高校へとそれぞれ別の道を歩き始める。
三年後、ヒロキは偶然、サユリがあの夏からずっと原因不明の病により、眠り続けたままなのだということを知る。サユリを永遠の眠りから救おうと決意し、タクヤに協力を求めるヒロキ。そして眠り姫の目を覚まそうとする二人の騎士は、思いもかけず「塔」とこの世界の秘密に近づいていくことになる。
「サユリを救うのか、それとも世界を救うのか」
映画『雲のむこう、約束の場所』新海誠
はたして彼らは、いつかの放課後に交わした約束の場所に立つことができるのか…。
主な登場人物(キャスト)
- 藤沢浩紀(吉岡秀隆)
…本作の主人公。素朴なタイプ。塔に強い憧れを抱いている。サユリに惹かれている。 - 白川拓也(萩原聖人)
…主人公の親友。知的でモテる。塔に憧れを抱き、サユリに惹かれている。 - 沢渡佐由理(南里侑香)
…吹奏楽部の少女。祖父が物理学者。ひょんなことから眠り病にかかってしまう。
映画『雲のむこう約束の場所』ラストについて考察
ラストの意味
ラストについて、
途中、ヒロキがタクヤから「サユリを救うか、世界を救うか」と究極の2択を迫られるシーンがあるが、その両方をとったという結末になっています。
サユリを眠りから覚めさせる唯一の方法は“あの約束”を果たすことでした。
なぜなら、サユリに残る“あの約束”が、現実世界へリンクする鍵となっていたからです。
しかし、サユリが目覚めると塔の活動を抑えられなくなってしまいます。
よって、“ヒロキはサユリを運びつつ、世界が書き換えられる前にミサイルで塔を爆破した”――という訳なのです。
その後はどうなった？
その後のヒントは、本作の冒頭にあります。
何故なら、本作の物語は「大人になった主人公が過去を回想する」シーンから始まるからです。
つまり、ラストのその後が、冒頭部分(現在)に繋がっているのです。
冒頭では、ヒロキが草原にひとり浮かない表情でたたずんでいました。
その様子から、
「サユリの無くした記憶を、また共に紡いでいく」
という結末には至らなかったようです。
つまり、ヒロキとサユリは結ばれなかったのだと分かります。
さらに、ヒロキが幻視したサユリが中学生の姿のままだということも引っ掛かった方も多いのではないでしょうか。
理由としては、
“サユリは何かしらの理由で亡くなった”
ということ、もしくは、
“あの夏を過ごした中学生のサユリが、分岐点となり止まったままだから”
と考えられます。
塔が破壊されたとき、サユリが「あなた」と呼んでいることからも、ヒロキの名前さえままならない状態になっていたことは確かです。
いずれにせよ、あの頃のサユリは消えてしまったのです。
サユリの想いだけでなく、ヒロキの想いも宙ぶらりんとなり、行き場をなくしてしまったのでした。
その後はどうなった？(ノベライズ)
実は、サユリ救出～その後(現在)についての空腹の時間は、ノベライズ小説にて補填されています。
映画版についてもそのような未来を辿ったとして考えて良さそうです。
ここではその内容をご紹介させていただきます。
ごく簡単にまとめると、
ヒロキとサユリはしばらく同棲した。互いが互いのもので、幸せを感じていた――はずだ。
やがて、サユリはヒロキの元から独り立ちする。
そうして、ヒロキはひとりになった。
と、なります。
ニュアンスは読み手によって変わるように思います。
詳細についてご興味がある方は、直接ご覧になることをオススメしたいです。
映画『雲のむこう約束の場所』ラストはバッドエンド？
ラストはバッドエンドなのかどうかについて、考えてみました。
個人的には、バッドエンドというほどでもないと思います。
何故なら、物語の背景に戦争があったにも関わらず、身近な登場人物が誰も亡くなっていないからです。これはすごいことに思えました。
そのうえ、ヒロキはサユリとの約束を果たし、眠り病から救うことができました。
ひとりぼっちで寂しいあの場所から救うことができたのです。
日本国民も救われました。
そのことを思えば、ヒロキにとって最悪なラストではないはずです。
とはいえ、ハッピーエンドでないことも確かです(サユリの大切な気持ちが失われたからです)。
「メリーバッドエンド」あたりが妥当なのではないでしょうか。
映画『雲のむこう約束の場所』ラストについて考察まとめ
今回は『雲のむこう、約束の場所』のラストについて考察しました。
- ラストの意味…ヒロキはサユリと世界の両方を救った。
- その後…ヒロキとサユリは結ばれなかった。
- ラストはバッドエンドなのか…メリーバッドエンド。
以上の結果となりました。
改めて戦争について考えるいい機会になりました。
戦争は繰り返されるからこそ、いま傍にある人を大切にしようと思いました。
ご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
