今回は小説『かわいそ笑』の考察についてです。
『SCP財団(共同創作サイト)』や『オモコロ所属(ゆるく笑えるwebメディア)』で活躍する人気ライター・梨さんのデビュー作です。
前代未聞の“読者体験型ホラー”ということで話題になっています。
本作には「面白い!」「ゾワゾワした!」「意味不明!」の声が多いです。
また百合説も浮上しています。どういうことなのか、気になるところですよね。
ということで本記事では、
- 実話?
- 意味不明だけど、どういう意味?
- 百合説
- qrコード
などについて考察・解説していきます。
もし気になるという方は、ぜひ最後までご覧くださいませ。
本記事は、読後の考察になりますので、ネタバレを含みます。
ご注意くださいませ。
【かわいそ笑】あらすじ・ストーリー紹介
「死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目でしょう。」
一度読んだら引き返せない、怪異が侵食する恐怖のネット怪談。
雨穴氏(『変な家』著) 推薦!!
インターネット上に伝わる多くの怪談。
その中に何故か特定の「あの子」が被害にあう奇妙な怪談が出回っていた。
とある掲示板のQRコード、インタビューの書き起こし、出典不明な心霊写真、匿名のメールデータ。
筆者がこれまでに収集した情報をもとに怪談を読み解く、読者参加型のホラーモキュメンタリー。
一見バラバラに見える情報から、浮かび上がってくる「ネット怪談の裏側の物語」とは。
イースト・プレス
【かわいそ笑】実話?
小説『かわいそ笑』は、実話ではありません。
“モキュメンタリー(mock《模倣》+documentary《実録に基づいた表現物》)”というジャンルです。
“あたかも、実話かのように読ませるフィクション小説”です。
【かわいそ笑】意味不明!どういう意味か考察
“書籍『かわいそ笑』を読んだことによって、読者は呪いに加担させられた”という意味です。
最後、梨さんから取材を受けていた40代女性が暴露していましたね。
例えば“あの話とあの話とあの話を鈴の体験談だと思ってもらった”と述べていることから、なにが真実だか分からなくなっています。
言えることは、40代女性が、呪詛返しから免れるために、誰でもいいから「横次鈴(よこつぎすず)」に呪いをかけてもらおうと奮闘していたということです。
具体的には、横次鈴が印刷された紙をバラまいたり、アンソロジー同人誌に応募したり、あらいさらしのメールを配信したり、呪いの方法を書き込んだり、あの手この手で第三者に呪いをかけさせようとしました。
…しかし、うまくはいかなかったようです。
呪詛返しは「40代女性」の元へ返ってきたのです。
何故なら、彼女の姿形は歪になり、最後には「ぷつり…」と消えてしまっているからです。
呪いに加担させられた私たち読者も「そろそろ」かもしれません。
【かわいそ笑】百合なのか考察!
本作には百合説があります。
それぞれの場合を考察すると、以下になります。
百合の場合
後述します。
百合ではない場合
りんが男性を監禁、呪う。男性が好きだった40代女性がムカつき、同じ呪いを用いて、りんの代わりに“タルパ・横月鈴”を呪う。
家財道具を無造作に移動させるような、部屋の中を歩いていて足がテーブルや椅子に触れた時のような、そんな音です。
小説『かわいそ笑』これは横次鈴という人が体験した怪談です・docx
この描写に違和感があります。まるで誰かがそこに監禁・拘束されていて、なんとか逃げようとしているように思えます。
その他の展開は「百合の場合」と大差ないと思います。
仮に百合だとしたら、なにがどうなっていたのでしょうか。
40代女性が同性に恋をしており、その結果、呪いに発展した……という百合説です。
以下、百合考察です。
数ある考察のうちの1つとして、お付き合いくださいませ。
【かわいそ笑】人物像について考察
主な登場人物は5名です。
- 梨(筆者)
- 40代女性
- 横次鈴(タルパ)
- りん(40代女性が恋した女性)
- 男性(漢字4文字の男性。あらいさらしの標的)
- 洋子(40代女性の友達)
以上です。
続いて人物像について見ていきたいと思います。
1:梨(筆者)
本書『かわいそ笑』の著者。
オモコロ所属の人気ライター。
2:40代女性
呪いの根源。
同人誌活動をしていた。
「右から下へ」「あらいさらし」など様々な方法で「横次鈴」を呪う。
呪詛返しから免れるために、小説『かわいそ笑』を出版する。
りんに恋している(百合)。
3:横次鈴(よこつぎすず)
40代女性が生んだタルパ(架空の人物)。
不特定多数からの呪いに苦しめ続けられる存在。
安っぽいセーラー服を着ている。
4:りん(40代女性が恋した女性)
40代女性に恋された女性。
同人誌活動、小説ブログをしていた。
「学生服のコスプレ」をして働いている。(コスプレバー?)
度々客とのトラブルに見舞われ、40代女性に相談している。
漢字4文字の男性と親密な関係。
ブレーザータイプ(ブラウス)の学生服を着ている。
5:男性
追悼儀式「あらいさらし」の標的になった男。
漢字4文字。友人が多い。誰にでも分け隔てなく接する。困っている人を放っておけない。
りんの相談にも乗ってあげていた。
40代女性の恋敵。
6:洋子
40代女性の友達。
オカルトが好き。
心霊写真(死体写真)を撮るように言われ、呪いに加担させられた。
【かわいそ笑】りんと男性の関係について考察
【これは横次鈴という人が体験した怪談です・docx】
同人創作繋がりで知り合った「りん」と「40代女性」。
忘年会をやろうということで、りんのお家に集まります。
「元々は、廊下の途中でほら私が寝る部屋があるって言ったじゃない? あっちにちゃんとした机とか置いて作業もね、してたんだけど。ほら近くにベッドがあったりするとどうしても、そっちに行っちゃうし集中できないから」
引用元:小説『かわいそ笑』これは横次鈴という人が体験した怪談です・docx
このとき、40代女性は「ベッドに気をとられる理由は、快適だから・ついゆっくりしてしまうから」という意味に捉えます。
その後、寝室から物音がします。
「ベッドから落ちたみたい、ごめんねびっくりさせちゃって」
引用元:小説『かわいそ笑』これは横次鈴という人が体験した怪談です・docx
いずれもりんは“はにかむように”述べています。
あらいさらしの追悼文に「もっと早くに縁が切れていれば彼がこうなることもなかった…」とあることからも、恐らくベッドで寝ていたのは(彼氏?同棲人?=4文字の男性)と考えられます。
どこが変更されているの?
「これは横次鈴という人が体験した怪談です・docx」のエピソードについて「全てが真実ではない」と念を押していますね。
ここまでに書いた文章はもちろん、元々の話も、すべてが真実であるというわけではありません。
引用元:小説『かわいそ笑』これは横次鈴という人が体験した怪談です・docx
一体どこが真実で、どこが偽りなのでしょうか?
それは、やはり「呪い」の部分だと考えられます。
「右上から左下に」に拘っているのは40代女性です。
“ふたりの関係に腹を立てて、おふだを作ったらたまたま呪いが完成した”という事実が、エピソード内では横次鈴に押し付けられていると考えられます。
百合説
百合説として、40代女性が男性から「気持ち悪い」と言われてしまった過去に注目です。
理由は以下の引用文です。
こういうことでしか喜べないくらいの感情や知能しか持ち合わせてないのにどの口が他人を気持ち悪いと言えるのか、今でも不思議で仕方ないのですが今となっては良い思い出な気がします。
小説『かわいそ笑』あらいさらし
若干こじつけではありますが、男性に腹を立てた40代女性が文句を言ったときに「百合なんて、気持ち悪い」などと言われてしまったと推測することができます。
ともかく嫉妬や怒りなどが相まって、40代女性は「右上から左下のおふだ」「あらいさらし」などで男性を呪います。
【かわいそ笑】意味不明!その後の流れについて考察
時系列にしてみます。
- 男性になにかしら呪いの効果が出る。
- りんが40代女性への当てつけで、リストカットなどの自傷を始める。(又は元々自傷癖あり)
…※1 - 「私のトイレ(隠語)」こと公衆トイレで薬を受け取ったりん。
…副作用で“幽霊”の幻覚が見える。40代女性に電話する。 - 40代女性が駆け付けた頃には、首を吊って自害していたりん。
- ムカついて、タルパ・横次鈴に架空の人物にストレスをぶつけるようになる。
…名前については、“りん”をもじったと推測できる。 - 「幽霊と合う方法」によりリダンツをして、架空の人物“横次鈴”で憂さ晴らししようとする。
…“死に直し”しようとするが、写真を撮影したことにより「もうやり直せないと残念でした」と言われる。※2 - 心霊写真(死体写真)を通じて呪い(呪詛返し)が広まる。
- 40代女性が、呪詛返しの矛先を有耶無耶にするために奮闘する。
- 40代女性は「横次鈴」になりきる。
…※3
1)すずのアカウント名でクスリをやる。
2)横次鈴になりきってセーラー服・などのコスプレをして街を歩く。 - 40代女性は、最後の手段として書籍『かわいそ笑』を出版する。
…呪詛返しからは免れず、ぷつりと消えてしまう。
解説
※1…横次鈴になりきっている40代女性が、ファンデーションテープ(リストカットを隠すためのもの)をしている。
鈴ちゃんへ
小説『かわいそ笑』あらいさらし
ここまでしてあげてるんだから、
死にたいならさっさと死んでくださいw
これらのことから、りんは自傷行為をしていたと考察できる。
※2
…“死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目”だから。
「あらいさらし」のメールの送信元がないのは、リダンツした状態から送信していたから。
百合説:化けて出てほしい(もう一度会いたい)という気持ちが根底にあったのかもしれない。そのために可哀相にしていた。
※3
呪詛返しされる対象さえ、横次鈴にしようとした。
1)…りんがよくクスリをやっていたから。この時に「他に人がいる」と言っているのは男性のこと。スレッドに集まっていたユーザーたちに呪いを巻いた。
2)…この頃にはすでに怪異となっており、洋子のスマホの着信に着信歴が残るのみとなる。呪いの写真を見ている洋子も、おかしくなりはじめている。
「ムカついたから」ただそれだけの気持ちが、呪いに発展してしまいました。
人の念は恐ろしいですね…。
【かわいそ笑】qrコード
梨さん(又は40代女性)から、特別に許可を頂いているページです。
【かわいそ笑】ラストの意味は?百合?意味不明だけど実話?考察まとめ
今回は小説『かわいそ笑』の百合説などについて考察してみました。
- 実話?…実話ではない。
- 意味不明!どういう意味?…40代女性は“呪詛返し”から逃れるために、梨著『かわいそ笑』の発行を目論んでいた。結果、読者が呪いに加担させられた。
- 百合説…40代女性がりんに恋していた。しかしりんは男性(漢字四文字)に恋していた。三角関係のもつれあいで、「タルパ・横次鈴」を犠牲にする呪いに発展。
などという結果となりました。
とくに「あらいさらし」の章がゾワゾワとし、ページを捲るのが止まらなくなりました。
あの不気味な感じを演出できるのが凄いです。
ご参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。